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家族信託

家族信託に潜むリスクのある契約条項【信託財産】

6月 16, 2021

弊所では、個人のお客様からのセカンドオピニオンサービスを実施しておりますし、全国の法律専門職や金融機関等からの依頼に基づき、家族信託の契約書のリーガルチェック・作成指導をさせて頂いています。
毎月50件前後の信託契約書のリーガルチェック等の中で、法的リスクのある信託契約書の条項や陥りがちなミスについて解説いたします。

今回は、『信託財産』について取り上げたいと思います。

 

【信託財産に入れることができるもの】

「信託財産に何が入れられるか?」というのは、家族信託の設計コンサルティングにおいては、基本中の基本ともいえますが、改めて実務的なポイントをまとめてみたいと思います。

◆ポイント1:積極財産であること

信託財産は、経済的に価値のある財産(金銭で評価できる積極財産)であればよいとされ、金銭、不動産、有価証券(国債、投資信託、上場株式など証券会社が預かっているものに加え、同族会社の未上場株式なども含む)、債権(売掛債権や貸金債権など)、自動車・貴金属・絵画・骨董品等の動産、特許権・著作権などの知的財産権なども信託財産に入れることが可能です。
法律上は、「財産が、現存すること、特定していること、委託者の所有に属することは、信託行為自体の有効要件ではなく、処分の効果がその目的物に帰属するための要件に過ぎない」(道垣内弘人『条解 信託法』31頁)とされていますが、実務上は、現存かつ特定可能なものでないと、信託財産として有効な管理処分の実現が難しいといえるでしょう。

一方、消極財産である「債務」は、原則として信託財産に入れることはできません
例外として、信託法第21条第1項第2号を根拠に、賃貸物件における「敷金・保証金等の返還債務」や区分所有建物における当該建物に係る「滞納管理費債務」は、賃貸物件や区分所有建物が信託財産となることで受託者に当然にその債務が承継されます(ちなみに、滞納管理費と似てはいますが、委託者が滞納している固定資産税は、受託者には引き継がれません(道垣内弘人『条解 信託法』100頁))。
つまり、信託契約締結後は、受託者が敷金・保証金等の返還・精算を行いますので、その原資についても委託者から預かっておかないと、受託者が自己負担することになりかねません。
信託財産目録に「現金 100万円」と記載した上で、信託契約書の条項において「敷金・保証金等の預り金相当額については別途受託者が引き継ぐ」旨記載されたものを見かけることがありますが、これですと、受託者が総額でいくらの金銭を預かったのか契約書上では分かりません。
したがいまして、敷金・保証金等の預り金相当額も合算した金額を信託財産目録に「現金〇〇円」と記載することで、信託契約開始時に受託者が預かった金銭の総額を契約書上明らかにする方がよいでしょう。

なお、委託者の債務を受託者が「信託財産責任負担債務」(受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務)として債務引受をすることで、実質的に債務も受託者の管理下に置くことが可能となります。

◆ポイント2:譲渡可能なもの

譲渡禁止債権・制限特約付き債権は、委託者・受託者間において債権的には有効となりますが、実務においては問題が多いです。
その代表格が「預金債権」です。
信託財産に預金債権として特定をしても、銀行実務においては、委託者自らが窓口で預金の払戻手続きをして現金化できなければ、受託者の管理下に置くことはできません。
したがいまして、信託財産として預金債権を入れるのではなく、委託者が払戻をする前提で金銭として具体的な金額を信託契約書に明記すべきです。

また、一身専属(本人のみに帰属する権利)は、信託財産に入れることができないので、「年金受給権」は、信託の仕組みの中で受託者が管理・処分することができません
したがって、2ヵ月に1度定期的に受け取る老親の年金を口座凍結させずにスムーズに親の生活・介護資金に充てる仕組みを作ることができるかが一つの課題となります。

生命保険の保険金請求権や解約返戻金請求権も保険の約款の中で譲渡禁止条項が盛り込まれていますので、契約者変更の手続きをしない限り、受託者という立場で老親に代わって保険金を受け取ったり、保険を解約して解約返戻金を受け取ることはできません

 

【当然に信託財産に入るもの】

信託契約開始時に信託財産として受託者の管理下に置いた財産から生じた「果実」は、当然に信託財産になりますので、信託契約書の信託財産を規定する条項に記載しなくても問題はありません。
例えば、信託財産たる金銭(以下、「信託金銭」といいます。)を預貯金として専用の口座に預けていた場合の「利息」は、当然に信託金銭になります。
賃貸物件を信託財産に入れた場合の賃料収入も当然に信託財産になります。

信託法第16条第1号には、信託財産が他の財産に形を変えても、その新しい財産が信託財産を形成するという、いわゆる「信託財産の物上代位性」が規定されていますので(寺本昌広『逐条解説 新しい信託法』74頁)、信託不動産を売却した際の売却代金は当然に信託金銭になります。
まれに、「信託不動産の売却代金から諸費用を控除した金銭を信託財産とする」という条項を見かけることがありますが、諸費用を控除する前の売買代金そのものが信託財産となりますので、このような条項は置くべきではありません。
また、信託金銭で受託者が購入又は建設した不動産は当然に信託財産になりますので、「受託者が購入又は建設したときはその不動産を追加信託する」旨の条項を置くことは信託法の理解を間違っているといえます。

受託者が信託契約書の中で借入権限を付与され、その権限に基づき受託者が信託財産のために借り入れた金銭は、法律上「信託財産責任負担債務」となりますので(信託法第21条第1項第5号)、その裏返しとして、その借入金は当然に信託金銭になります。したがいまして、「受託者が借入れをしたときはその金銭を追加信託する」というような条項も置くべきではありません。

まとめますと、信託財産から生じる「法定果実」や信託財産が形を変えただけの財産、受託者がその権限に基づき借り入れた金銭などは当然に信託財産を形成しますので、「追加信託」という概念が生じません。

 

【信託契約書に記載する際に気を付ける財産】

前述の通り、「預金」を信託財産として特定することは実務上無意味ですので、実務では、「現金 金〇〇円」と記載して、信託契約締結後速やかに委託者が銀行窓口で当該金額を信託専用の口座に送金するという手順を踏みます。
なお、現金については、委託者が元気でいる限りは、適宜受託者に金銭を追加して託すこと(いわゆる「金銭の追加信託」)が容易に可能ですので、信託契約開始時に託す金額の精査はあまりせず、暫定的な金額から管理を始める方も少なくありません(小生の依頼人の中には、信託契約開始時の現金は敢えて「金0円」という方もいます。)。

証券会社に預けている有価証券類については、大手証券会社やネット証券において家族信託の信託口口座の作成に対応できるようになってきておりますので、まずは委託者が預けている証券会社に対応の可否を確認しましょう。
その上で、現時点では対応できない場合は、今のうちに換価処分して現金で信託することはもちろん、対応できる証券会社に移管することや将来的にその証券会社も家族信託に対応できるようになる可能性も視野に入れて、今から敢えて信託財産に入れておくことも選択肢になるでしょう。
その場合は、信託契約書の信託財産目録の中で具体的に個別の銘柄を特定して記載しておくようにしましょう。
なお、家族信託に対応していない証券会社でも、「代理人届出」制度がある場合があります。
あらかじめ家族の誰かを代理人として指名しておくことで、証券口座の名義人たる老親に代わって子が代理して有価証券類を換価処分したり、銀行口座に送金・払戻しを指示したりできる可能性があります。

借地権付建物の場合は、信託財産目録に建物を記載するだけではなく、借地権の目的たる土地の表示もして、借地権も信託財産となることを明記しましょう(余談ですが、借地権付建物を信託財産に入れる際には、事前に地主さんの承諾をもらっておきましょう)。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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