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不動産の「等価交換」とは? 仕組みやメリット・デメリットなどを分かりやすく解説!

1.不動産の「等価交換」とは

不動産の「等価交換」とは、土地所有者が土地の権利の一部をデベロッパー(マンション建設業者・開発業者)に譲渡し、土地所有者は、譲渡した土地の価値に相当する分につき、デベロッパーが建てた「敷地権付区分建物」(分譲マンション)の所有権を得られるという土地活用の手法です。

 

2.等価交換の2つの方式

等価交換をする場合、主に「全部譲渡方式」と「部分譲渡(一部譲渡)方式」の2つの方式に分けられます。

どちらの方式も、最終的には出資した財産比率に応じて区分所有建物を取得することには変わりがありませんが、計画・契約の段階でどちらを採用するかを検討・決定する必要があります。

 

①全部譲渡方式:全部の土地を一旦譲渡する方法

土地全部の所有権を最初にデベロッパーに譲渡する方法を「全部譲渡方式」といいます。

デベロッパーが自分名義となった土地の上に区分所有建物を建て、完成後に出資比率に応じて土地所有者に区部所有建物と土地の一部を譲渡しなおします(土地所有者が買い戻す形になります)。

この方式は、デベロッパーが一旦土地をすべて買い取ることにより土地の権利関係や利害関係者間のトラブルを防ぐ効果が見込めますので、一般的に土地所有者が複数いる場合にメリットがあります。

その一方で、建物の建築後には、土地所有者が再度、出資比率に応じた土地持分を買い戻す形となるため、余計な不動産取得税や登録免許税が発生するというデメリットがあります。

②部分譲渡方式:一部の土地を譲渡する方法

あらかじめ計画で定めた土地の交換比率に基づき、土地の持分をデベロッパーに譲渡する方法を「部分譲渡方式」といいます。

デベロッパーは土地の名義を移さずにそのまま建て、建物完成後、土地所有者が出資比率に応じて土地の持分をデベロッパーに譲渡するともに、区分所有建物の一部をデベロッパーから譲渡してもらいます。

土地所有者が単独で持っている土地の場合には、この部分譲渡方式が採用されることが多いです。

この方式であれば、全部譲渡方式と違い、底地持分を再購入して不動産取得税等が課税されることがないため、土地所有者の税負担が少なくて済むというメリットがあります。
この方式は、建物建築前に、建築後に所有する割合をしっかりと決めておく必要があり、どの部分を譲渡してどの部分を受け取るかというデベロッパーとの協議や計画確定に至るまでに多大な時間と労力を要する可能性があります。したがいまして、計画から実際に竣工するまでの所要日数がかかるというデメリットがあります。

 

 

3.等価交換の5つのメリット

不動産の等価交換の代表的なメリットとして、下記の5つが挙げられます。

①自己資金なしで始められる

この手法を採用する場合、建物の建設費用は全額デベロッパーが負担します。

そのため、土地所有者が多額の借入れをしたり、自己資金を捻出するリスクを負うことなく土地活用ができます。

②税金の繰延措置がある

等価交換は、一定要件を満たすと、「立体買換えの特例」という譲渡所得税の優遇措置を受けることができます。

等価交換では、所有者はデベロッパーに土地を売却することになるため、原則としてその売却益には譲渡所得税と住民税が課されます。

しかし、「立体買換えの特例」を活用すると譲渡所得税を100%繰り延べることが可能になります。あくまでも繰り延べであり、譲渡所得税が免除される訳ではないですが、等価交換の実行時には税額は発生しなくて済むメリットは大きいといえます。

ただし、等価交換に際して差額調整のために現金を受け取った場合には、その受け取った現金(交換差金分)に応じた譲渡所得税が課税されますので、その点は注意が必要です。

③専門的知識がなくても土地活用ができる

等価交換は、デベロッパーが主導していくため、土地活用やマンション建設に関する専門知識がなくてもお任せできる安心感があります。

将来的に賃貸経営を行う際にも、デベロッパーの信用力(ブランド力・ネームバリュー)を利用することができます。

④住み慣れた土地を手放さずに自宅を確保しながら土地活用ができる

先祖から引き継いだ土地や住み慣れた土地を手放すことなく、そこにマンションを建てて住むことができるというのはメリットの一つと言えます。

また、等価交換の場合、出資に応じて複数の区分所有建物を得ることもできます。

最上階の1室を自宅として確保し、他に割り当てられた部屋を賃貸用として賃料収益を得ることも常套手段といえます。

⑤遺産分割がしやすくなる

土地所有者に相続が発生したことにより1つの大きな土地を複数の相続人で相続することになった場合、不動産の共有相続のリスクが生じますし、土地ならどのように分筆して、誰がどの部分を相続するかで揉める場合があります。

広い土地にマンションを建設し、複数の敷地権付区分建物として資産を組み換えておくことで、複数の相続人がいても、円満円滑な遺産分割がしやすくなります。

 

4.等価交換の4つのデメリット・難点

先に不動産の等価交換の代表的なメリットをご紹介いたしましたが、反対に、デメリット・難点・注意すべき点として、下記の4つをご紹介します。

①マンション建設に適さない土地だと実行できない

そもそも、土地の立地がよくないと、つまり、デベロッパーが分譲マンションの開発販売で収益を見込める土地でなければ、具体的な計画は進められません。

デベロッパー側が考える要件を満たす必要がありますので、誰でも使える手法ではないといえます。

 

②「等価」の調整が難しい

土地所有者とデベロッパーは、竣工後の自己の建物配分を多くしようと利害が対立するため、調整に多くの労力と時間がかかります。

等価交換は土地と建物を等価で交換するという前提はあるものの、実際には土地の評価が出しづらいことと、デベロッパー主導で計画が進むため、土地所有者が納得のいく結果を得るために粘り強い交渉が必要となる場合があります。

③土地の一部を手放すことになる

等価交換では、敷地権付区分所有建物という財産を得る代わりに、土地の権利の一部をデベロッパーに引き渡し、デベロッパーは分譲マンション(敷地権付区分所有建物)として、不特定多数の方に販売することになります。

つまり、土地の一部は手放すことになり、もはや自らの裁量で土地を利用・活用することはできなくなります。

したがいまして、先祖代々の土地であるような場合には、慎重に検討をする必要があります。

④利回りが低くなる傾向にある

自己資金で建物を建てる場合に比べ、等価交換は2-②の「立体買換えの特例」が適用される分、減価償却費が小さくなります。そのため、収益に対して所得税などの税金が高くなり、利回りが小さくなる傾向にあります。

 

5.等価交換に適した土地とは

等価交換には、建物に十分な収益を見込める土地であることが求められます。

それでは、どんな土地が等価交換に適ししているのか、その代表的な条件を下記にご紹介します。

①環境や交通面などが好立地であること

等価交換を検討する土地は、環境や交通面などから見て好立地である必要があります。駅から近い(徒歩●分圏内にある)、人気の高い街にある、高さ制限が無い、など立地条件がよい土地でなければ、デベロッパーから等価交換の提案自体がされないでしょう。

②面積が広い土地(最低でも100坪以上)

マンションを建築するのであれば、それなりの土地面積が必要になります。最低でも100坪以上の広い土地が求められます。

上記のように、好立地で面積の広い土地を保有しているのにも関わらず、まだ活用していないという場合には、等価交換も一つの選択肢として検討するのは良策となります。

 

6.まとめ

等価交換は、土地と建物を等価で交換して建物を建設する開発手法です。

初期費用が不要、税金の優遇措置があるなど、土地所有者が低リスクで始められる土地活用方法となります。

ただ、デべロッパー主導で計画が遂行されがちであることや、そもそも等価交換ができるほど好立地の土地であれば、自己運用した方が高収益を生みやすい可能性もあるため、他の土地活用方法もあわせて、専門家に意見を聞きながら慎重に検討することが求められます。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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