「任意後見制度」とは、本人がまだ契約締結や財産管理に必要な判断能力を十分に有している間に、将来認知症になった場合等判断能力が衰退した時に備えて、予め信頼できる人に自分に代わって法律行為等を任せる内容の契約を事前に締結しておく制度です。
「自分の老後は自分で決める」という(難しい言葉で言うと「自己決定権の尊重」といいます)積極的な考え方に基づく制度です。
もう少し分かりやすく言いますと、「今は元気でなんでも自分で決められるけど、将来は認知症になってしまうかも…!?」という不安を感じている方が、将来のもしもの時は自分の面倒を見てもらいたいという人と事前に任意後見契約を結んでおき、「認知症かなぁ」と思った時に家庭裁判所に申立をして任意後見人の就任をしてもらう仕組みです。
任意後見契約は、本人と信頼できる人(任意後見受任者)との間で交わしますが、これは必ず公証人役場で“公正証書”にしなければ効力が発生しません。
委任する内容は、本人の判断能力が低下した状況における、本人の生活・療養看護・財産管理等に関する事務で、そのための代理権を任意後見人に授与する形になります(事務の範囲・内容は、本人と任意後見受任者との間で自由に決められます。
ただし、結婚・離婚・養子縁組などの一身専属的な権利については、任意後見契約に盛り込むことはできません)。
そして、任意後見契約が締結されると、この内容が法務局に“後見登記事項”として登記されます。
なお、登記される事項は、任意後見監督人の選任(任意後見契約の発効)前であれば、下記のとおりとなります。
(A)本人の住所氏名
(B)任意後見受任者の住所氏名
(C)代理権の範囲
また、任意後見監督人の選任(任意後見契約の発効)後であれば、下記のとおりとなります。
(a)本人の住所氏名
(b)任意後見人の住所氏名
(c)任意後見監督人の住所氏名
(d)代理権の範囲
判断能力の衰退がみられた時点で、本人や任意後見人等が家庭裁判所に申し立てをして、任意後見監督人を選任してもらいます。
この任意後見監督人の選任をもって、任意後見人の代理権が発生(任意後見契約が発効)することになります。
以後、任意後見人が本人に代わって財産管理等の後見事務を行い、それを任意後見監督人がきちんと仕事をしているかチェックします(任意後見制度での家庭裁判所の関与は、任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります)。