任意後見監督人が選任されると、任意後見契約が発効し、任意後見が開始されます。つまり、任意後見人の代理権が発効します。
すると任意後見人は、任意後見に関する後見登記事項証明書を提示しその代理権の存在を明らかにした上で、任意後見契約で受任した事務を行います。
例えば、預貯金の出し入れや振込み、必要資金の借入などを行いますし、必要に応じて要介護認定の申請・審査請求、介護サービス契約の締結、介護サービスの履行状況のチェック・苦情申立なども行います。
任意後見は、本人の生活や療養看護、財産管理の事務を受託するものですので、任意後見人自らが介護労働をする義務はなく、介護保険や民間の家事代行サービス等を利用すればよいです。もちろん、任意後見人自らが介護労働を引き受けてもよいですが、それは任意後見契約の内容ではありませんので、別途請負契約や準委任契約がなされたとみなされます。したがって、本人に請負や準委任の契約の意思やその取り決めの事実がないのであれば、介護労働を任意後見人自らがしたことを理由に勝手に報酬を取ることはできません。
任意後見人は、法定後見人と違って代理権しかなく、本人の行為をあとから取り消す“取消権”がありません。したがって、本人が浪費を繰り返すなど、どうしても取消権が必要な場合には、法定後見を申し立てる他ないといえます(状況によっては、任意後見人も法定後見の申立ての権限があります)。
≪任意後見人の義務≫
任意後見契約は、委任契約の特殊なものですから、その性質に反しない限り、民法の委任の規定の適用を受けます。
任意後見人は、“善管注意義務”(他人の財産を管理する者として一般に要求される水準の注意力を持って管理を行うべき義務)がある他、本人の請求があるときには、委任事務の状況を報告する義務や受任事務を処理する上で受け取った金銭その他の物を本人に引き渡す義務があります。
さらに、任意後見法に基づく義務として、「本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮する」義務を負います。
任意後見人は、成年後見人と同様に単に財産の管理をするのみならず、本人の生活、療養看護に関する事務も受任すること、本人の判断能力が減退した時点における事務を受任するものであることから、特にこのような義務が規定されたのです。
この義務は、任意後見契約の中の特約で、免除したり軽減することはできません。
成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理 法律相談トピックス
任意後見人の職務 【任意後見】
7月 6, 2008