後見人の職務である「身上監護」とは、被後見人の生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行うことをいいます。
被後見人の住居の確保及び生活環境の整備、施設等への入退所の手続きや契約、被後見人の治療や入院の手続などがこれに該当します。
「被後見人の生活や健康、療養などのお世話を行うこと」は、必ずしも被後見人を引き取って同居をしたり、病院等に頻繁に出向いて直接的な身体介護をしなければならない訳ではありません。
後見人の職務は、被後見人の生活全般にわたる法律行為を行うことであり、介護労働等の事実行為を含むものではありませんので、被後見人の直接的な介護などについては、他の親族や病院、施設等に委ねてもかまいません。
但し、後見人は、それらの親族や機関によって「被後見人が適切な治療や介護を受けているかどうか」について適時確認をしておく必要があります。
後見人の職務である身上監護の主な具体的内容としては、以下があげられます。
- 医療に関する事項
- 住居の確保に関する事項
- 施設の入退所及び処遇の監視・異議申立て等に関する事項
- 介護・生活維持に関する事項
- 教育・リハビリに関する事項
後見人は、これらの事項に関して、契約を結んだり、契約の内容が確実に実行されているかどうかを監視したり、場合によっては契約相手に対して改善を求めたりしなければなりません。
また、契約内容に基づいて費用を支払うことも、当然に後見人の職務になります。
さらに、必要な場合には、生活保護の申請をしたり、介護保険における要介護度の認定に対する異議申立てを行うなどの、公法上の行為も後見人の職務です。
身上監護にあたっては、被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しながら、同人の利益に最大限かなうように職務を行わなければなりません。
本人の意思に反する入院や介護等の強制は、後見人であっても許されるものではありません。