被後見人の財産から費用を支出する際には、それが被後見人のための適正な出費であることが当然必要ですが、「限りある財産を有効に利用する」という視点が必要です。
その管理にあたっては、以下に注意しなければなりません。
● 被後見人のための支出と、後見人など第三者の支出とが混同しないように区別する
● 日頃から支出状況についてきちんと記録する
● 個々の支出内容を裏付ける領収書等の証明資料をしっかりと保管する
後見人に選任された方は、仮に被後見人の親族であったとしても、後見人となった以上は「他人の財産」といった意識で被後見人の財産を管理しなければなりません。
被後見人の配偶者や子に対してであっても、被後見人の財産を贈与したり、貸し付けたりすることは原則として認められません。
また、実の親が後見人であっても、子である被後見人の財産を自由に使ってよいというものではありません。
適正な支出とは、被後見人についての下記が代表的なものとして考えられます。
1.生活費・医療費・施設費
2.税金や社会保険料
3.家屋修繕費など財産の維持管理費
4.負債返済費
5.身上監護のための職務遂行費用(面会に要する最低限の交通費など)
6.後見監督における資料収集費用(登記簿謄本の申請料など)
7.被後見人に扶養義務のある配偶者や就学中の子らの必要生活費
(同人らに収入のある場合は、必要生活費の不足分のみ)
しかしながら、上記内容であれば無制限に支出して良いというものではなく、被後見人の生活水準を保ちつつも、限りある財産を有効に利用することが必要です。
その判断にあたっては、一般の良識にしたがって誰もが納得できる支出であることが前提となります。
被後見人が第三者から債務(ローンや借金など)を負っている場合には、もちろん被後見人の財産から返済していくことになります。
ただし、被後見人が身内から借用書も作らずに借り受けた金員については、贈与なのか貸金なのか明確に区別ができません。
また、多くの場合、債務内容や金額等を証明する資料もありません。したがって、そのような場合には、安易に弁済するのではなく、事前に裁判所に相談しなければなりません。