夫婦が離婚する際には、さまざまな問題を伴うことが多いです。
なかでも、離婚に伴い、夫婦の一方が配偶者に財産を渡す「財産分与」は、非常に重要な行為であり、離婚を検討している方の中には、法律面・税務面で不安や懸念を抱えている方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、離婚に伴う財産分与と税務について簡単に解説します。
財産分与を受ける側
贈与税
離婚に伴って財産分与を受けた方(財産を受け取った方)は、基本的に「贈与税」は課されません。
財産分与は、あくまでも夫婦が婚姻生活中に築いた共有財産を清算・分割する手続きですので、財産分与を受ける側は、自分の潜在的な共有財産を分割して手にしたにすぎず、贈与には当たらないからです。
また、相手方の離婚後の生活保障のために財産を渡すという“扶養的財産分与”ということも認められていますが、これも原則として贈与税は非課税となります。
ただし、下記㋐㋑のような例外もあるため注意が必要です。
㋐分与された財産の額が夫婦共有財産の清算の概念を上回るほど過剰に多い財産を受け取った場合
㋑離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
上記㋐の場合は、その多過ぎる部分に贈与税が課税されるリスクがあります。
上記㋑の場合は、いわゆる“偽装離婚”による財産の無償譲渡だとして、財産分与でもらった財産すべてに贈与税がかかるリスクがあります。
不動産取得税
離婚に伴う財産分与で不動産を受け取った場合、不動産の取得者に課せられる「不動産取得税」(地方税法73条の2)は、原則として課税されません。
ただし、これも財産分与の内容によって、課税対象となるので注意が必要です。
つまり、実質的には夫婦で築いた共有の財産を離婚に伴い清算したという“清算的財産分与”として不動産をもらう場合は、不動産取得税は課されません。この場合の所有権移転は、形式的な名義変更であり、実質的には不動産の所有権が移転したものではないと考えるからです。
ただし、“清算的財産分与”は、夫婦共有財産を2分の1ずつ分け合うという原則的な考え方がありますので、それ以上の割合で不動産をもらった場合、その合理的な根拠・理由がないと不動産取得税の課税リスクがあります。
一方、“清算的財産分与”としてではなく、“扶養的財産分与”や“慰謝料的財産分与”(不貞行為やDVなどによって受けた精神的苦痛のための財産給付)として不動産をもらう場合は、実質的に不動産の所有権が移転すると考えられますので、不動産取得税が課されることになります。
上記を踏まえまして、ご自身のケースについて、贈与税・不動産取得税の課税リスクにご不安な方は、財産分与の手続を実行する前に専門家に相談することをお勧めします。
財産分与をする側
贈与税
財産を渡す側に対しては、贈与税は課税されません。
譲渡所得税
金融資産の給付に加え又は金融資産の給付に代え、不動産を財産分与した場合、分与した側に「譲渡所得税」が課税される可能性があります。
つまり、財産分与で配偶者に不動産を渡す場合、財産分与した時点の土地・建物を“時価”で相手方に譲渡したものと扱われます。
そのため、「財産分与時の時価」と「取得費(購入代金など不動産を取得した際の費用)」とを比べた場合、財産分与時の時価が取得費を上回る場合、「譲渡益」という概念が生じるので、この譲渡益が「譲渡所得税」の課税対象となります。
ただし、財産分与にあたり、自宅を分与する場合には、“居住用不動産の3000万円特別控除”の特例が適用できる可能性もあります。
上記を踏まえまして、ご自身のケースについて、譲渡益が生じるのか、譲渡益が生じる場合は、確定申告をすれば“居住用不動産の3000万円特別控除”の特例が適用できるのかどうか、財産分与の手続を実行する前に専門家に相談することをお勧めします。
以上、今回は離婚に伴う財産分与と税務について簡単に解説しました。離婚に伴うさまざまな問題は、複雑であるケースが多いです。特に税務に関する問題の解決は、専門知識が必要になる可能性が高いと言えます。
当事務所ではご要望があれば、財産分与に関する税務に強い税理士さんのご紹介も可能です。お困りの際は、一度当事務所にご相談ください。