商業登記・企業法務

2022年1月31日より始まる「実質的支配者リスト制度」とは?

1月 30, 2022

1.実質的支配者リスト制度とは?

「実質的支配者リスト制度」は、株式会社(特例有限会社を含む)からの申出により、法務局(商業登記所)が、その会社の実質的支配者リスト(※)について証明をしてくれる制度です。

※「実質的支配者リスト」とは、簡潔に言うと、「当社の実質的な経営権を持っている人はこの人です」という会社側が作成する株主構成(議決権を保有する者)をまとめたリストです。
なお、実質的支配者を英語表記で「Benefical Owner」と呼びますので、このリストとのことを、頭文字を取って「BOリスト」ということがあります。
これまで、金融機関などの要請によりその会社の実質的支配者が誰であるかを示す必要があった場合、会社が作成した「株主名簿」に会社代表印を押印して「本書面が当会社の株主名簿に相違ありません」という原本証明を付けたものを提出していました。あるいは、株主名簿に代えて、法人税の申告書の「別表Ⅱ」を提出しているケースもあるでしょう。
今後は、法務局が保管し、必要に応じて認証文を付けて発行してくれる「BOリスト」が使えるようになります。

2.「実質的支配者リスト」は何に使うのか?

この「BOリスト」の主な使い道は、金融機関への提出用であると言えます。
金融機関は、関係法令において、資金洗浄(マネー・ロンダリング)等の対策の一環として、取引先となる法人の実質的支配者の確認が義務付けられています。
そのため、金融機関は、前述の株主名簿や法人税申告書の別表Ⅱの提出を各取引先に要請しておりますが、「BOリスト」の方がより信頼性があり、また無料で何通でも発行できる点においてもより簡便性が高くなるのではないかと期待されています。
現時点では、この制度を使うかどうかは、それぞれの会社の自由となっておりますが、将来的には、「BOリスト」の提出を義務化していく方向になるのではないかと思われます。

 

3.利用することができる法人

この制度を利用することができる法人は、特例有限会社を含む「株式会社」となっております。
したがいまして、他の法人、例えば、合同会社・合名会社・合資会社・NPO法人・一般社団法人などは、この制度を利用することはできません。

 

4.実質的支配者とは?

この制度の対象となる実質的支配者とは、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者を指します。
(1)会社の議決権総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
(2)(1)に該当する者がいない場合は,会社の議決権総数の25%超の議決権を直接又は間接に有する自然人

つまり、議決権総数の50%超又は25%超を直接的又は間接的に保有している個人のことを「実質的支配者」と定義しているのです。

なお、「直接保有」とは、自分でその会社の株式を保有していることを指します。
一方で、「間接保有」とは、自分が50%超の議決権を保有する別法人が、その会社の株式を保有している状態を指します。

そして、直接保有と間接保有の両方を合算して、議決権総数に対して何%の議決権を持っているかを見極めますよという考え方です。

つまり、直接的か間接的かを問わずその会社の株式を保有し、実質的にその会社の経営権を握ってるのは誰か、それが「実質的支配者」ということになります。

 

★ この制度の詳細は、法務省のホームページをご参照下さい ↓↓↓

実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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