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NHK『あさイチ』でも特集の「実家の処分」と「家族信託」について 【その1】

12月 30, 2021

12/22(水)放送のNHK朝の情報番組『あさイチ』では、「どうする?実家の家と土地」というテーマで特集がされました。
人気番組なので、全国各地で視聴された方も多いようです。
ここでは、『あさイチ』を見逃した方はもちろん、視聴された方にとりましてもお役に立てるように、小職の補足も含め、番組でご紹介された下記の「お悩みランキング」の10テーマを元に改めてご説明します。

 

→【その2】はコチラ

→【その3】はコチラ

 

 

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【お悩みランキング ベスト10】
1.そもそも どうやって売るの?
2.売りたいけれど売れなくて困っている
3.親が元気な間に準備できることは?
4.親・兄弟姉妹と意見が合わない。どうやって話せばいい?
5.共有名義でも大丈夫?
6.親が認知症などで意思確認ができない
7.農地・田畑はどうしたら?
8.離れた家の管理が大変
9.実家をたたみたいがなくなるのも寂しい
10.不動産会社の見極め方は?

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1.そもそも どうやって売るの?

実家の近く(地元)の不動産屋に相談するのが、もっとも無難な方策です。
ただし、不動産屋さんの仲介手数料は、売買価格の3~5%程度なので、売買価格が安い不動産については、不動産屋さんが親身になって仲介してくれないケースも多いと言えます。
実家の売却に関するポイントは、3つあります。

①相場の適正価格を把握

複数の不動産屋さんに無料査定をしてもらい、近隣不動産の取引事例や地元の経済状況・不動産ニーズを正確に把握したいです。
その上で、売り方(古家が建ったままの現状有姿か、古家をリフォームして中古住宅として売るか、建物解体して更地として売るかなど)、売る相手(近隣住民か、不動産業者か、一般個人か)、売り出すタイミング、売出価格について、不動産屋さんと検討することが必要です。
接道義務を果たしていない「再建築不可物件」は、非常に売りにくく、売却価格の㎡単価は、通常の土地よりもかなり下がる可能性があります。
また、土地の測量や隣地の方との境界確定作業(境界石・境界票の設置や隣地の方と境界確認書の取り交わし等)を行わないと売りにくいので、そのための先行投資が必要になることもあります。

②売出価格の設定

できるだけ高値で売ろうと頑張らないことも重要です。
売出価格を高めにすると、買い手が付かずに数カ月間レインズ(※)に掲載されっぱなしになり、売れ残り・人気が無いというマイナス印象を持たれ、ますます売りにくくなるというリスクもあります。

※「レインズ(REINS)」とは国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の英語の頭文字を並べて名付けられ、組織の通称にもなっています。 レインズは設立以来、一貫して利用の拡大が続いており、日常生活で水道、電気、ガスが欠かせないように、不動産取引を行なううえでなくてはならないインフラ(基盤)となっています。

③早めのアクション

不動産の売却には、タイミングも重要となりますので、早めに動き、いざという時にすぐに売却活動に入れるように備えておくことがお勧めです。
特に、今は販売される不動産の数が需要よりも少なく、不動産価格が上昇しているという話も多く聞きますので、タイミングとしては今は良いかもしれません。

 

2. 売りたいけれど売れなくて困っている

大都市圏の駅近物件ならともかく、郊外・地方にある実家の土地・建物の売却は、容易ではないケースも多いです。
売却の前提として、家屋内の家財の撤去、場合によっては実家の建物を取り壊すことも想定しなければなりません。この動産処分費用や建物解体費用は大きな負担となりかねません。
だからといって、実家の売却を先送りにすると、毎年の固定資産税の負担ばかりが生じるだけではなく、近隣に迷惑をかけないように、庭の除草や庭木の伐採などの維持費もかさむことが考えられます。

実家の処分に困ったときの代表的な選択肢は、下記の4つでしょう。

①近隣の方に買ってもらう

近隣の方が欲しがっている場合は、近隣の取引相場前後での売買も可能ですが、欲しいと思っていないケースも多いです。その場合は、登記費用等の負担も含め、無償で引き取ってもらうことも有り得ます。ただし、無償で不動産を渡してしまうと、もらう側に「贈与税」がかかってしまうので、無償ではなく、安価であっても有償で「売買」することも良策となります。

②相続のタイミングで相続放棄する

「相続放棄」は、相続開始を知ってから原則3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きを行う必要があります。また、不要な不動産だけを放棄することは許されず、プラスの資産も含め資産全てを引き継ぐ権利を放棄することになりますので、実際にはかなりハードルは高くなります。

③行政側に引き取ってもらう

理論上は可能でも、実際に行政側が寄付を受け付けるケースはほとんどありません。
2021年4月に新しく成立した法律「相続土地国庫帰属法」が2023年4月27日にか施行予定です。
この新法では、下記の代表的な要件を満たす土地を国に引き取ってもらうことが可能となります。
ただし、運用面の詳細はまだ明らかになっていませんので、実際には引き取ってもらうための費用が高額になる可能性もあり、現実的に選択肢となるかどうかは未知数と言えます。
・工作物や樹木のない更地であること
・土壌汚染が無いこと
・崖が無いこと
・担保権などが設定されていないこと
・隣地の方などと権利関係の争いが無いこと
・10年分の管理費に関する費用(柵や看板の設置費用、除草等の費用も含む)を国に納めること

④有償・無償で貸す

空き家となった実家(古家)を無償又は有償で貸すことも選択肢になります。
畑については、家庭菜園として貸し出すことも良策になるかもしれませんが、農地については、農業委員会への事前相談が必要になってくるでしょう。
なお、有償・無償を問わず、当初の目的外・用途外に使用・悪用されトラブルが生じることのないように、賃貸借契約書(無償の場合は使用貸借契約書)で用途・期間などを明記することが重要です。

上記①~④の選択肢を検討したときに、早い段階で更地にしておいた方が取り得る選択肢が増えるとも言えますが、建物の建っていない更地は、固定資産税が高くなるリスクもありますので、十分な検討がお勧めです。

 

3.親が元気な間に準備できることは?

親が元気なうちにやるべきことは、大きく4つあります。

①保有資産状況の情報共有

まずは、「名寄帳」を取得して、両親が所有する不動産を家族でしっかりと把握しましょう。
ただし、、同一市区町村内に所有する不動産の一覧であり、各市区町村ごとに発行してもらうことになりますので、そもそも固定資産税の納税通知書などにより親が所有している不動産の場所(市区町村)が分からないと把握のしようもありません。その点においても、親が元気なうちに保有資産の全体像を把握しておくことは大きな意味があります。
なお、名寄帳は所有者本人でないと取得できませんので、親自身による発行申請か、親から委任状をもらって子や専門家が代理取得することになります。
また、次の②で触れているとおり、親の老後のサポートに備え、預貯金や有価証券等の両親が保有する金融資産についても、家族内で情報共有できていると安心です。

②現在の収支状況及び将来の収支予測の情報共有

親の所有財産の把握に加え、親が要介護状態、入院・入所せざるを得なくなる事態に備え、現在の収支状況について把握しましょう。
つまり、2ヵ月に1回入ってくる年金の額や不動産の賃料収入、株などの配当がある場合は、平均で月額どの程度の収入が見込めるか、その一方で、毎月生活費等でどのくらいの額を支出・消費しているかを認識しておくことは非常に重要です。
さらに、現状を踏まえ、もし親が将来的に高齢者施設に入所せざるを得なくなった場合には、入所一時金や毎月の施設利用料でどのくらいの支出を想定すべきか、それにより現有資産が増えていくのか、減っていくのかの大まかな予測を立てることが可能となり、親の老後を支える計画がイメージしやすくなります。。

③隣地との取り決めの確認

隣地所有者との土地境界線が明確になっているか、隣地や近隣の所有者との間で取り決めなどがないかについて、親に確認をしておきましょう。
例えば、隣地との境界線について境界確認書の取り交わしがされているか、隣地との間に建つブロック塀がどちらの敷地に建っているか、ブロック塀の修繕に関する費用負担はどうするか、私道部分についての通行許諾・土地掘削の許諾に関する書面の取り交わしがなされているかなど、親からきちんと聞いておくことはとても重要です。

④遺言書・家族信託で親の希望・想いを遺す

親に面と向かって「遺言を書いて」は言いづらいです。遺産を狙っていると勘違いされたり、親子間の関係が悪くなってしまうリスクもあります。
ここで重要なのは、親に対して、「実家や親の保有資産について、この先どうしたいか」という希望・想いを聞くことが重要だと考えます。
人生100年時代を考えた際に、親の長い長い老後をどう支えていくかという観点から、親の保有資産を両親の生前中にどのように管理・活用・運用・処分したいと考えているか、まずは親側の意見を尊重すべきです。
その上で、老後の先にある相続後のお話に話題を持って行くことで、スムーズに親亡きあとの資産承継について、スムーズなお話合いができるケースが多いです。
「遺言」は、親が亡くなった後の資産承継先を指定する機能がメインですので、ハードルはやや高いかもしれません。
その一方で、「家族信託」は、親の長い老後をどう支えていくかを中心に検討を始め、その先の資産承継・財産管理についても指定するというプロセスを取りますので、親側としても、家族としても、非常に検討しやすいと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

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  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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