その他雑感 司法書士のつぶやき

遺言書書き換え合戦

2月 12, 2014

こういう仕事をしていると、相続争いの前哨戦が
親が介護状態となっている生前から勃発するケースを目にする。

つまり、遺言の書き換え合戦だ。

親の目の黒いうちは、親の意向がきちんと反映できるから、
そんな問題は生じない。
『遺言なんて書かないぞ』と言われればそれまでだ。

だが、高齢からくる軽い認知症等で、親の威光に陰りが見えたら要注意だ。
施設に入っている老親を食事等の甘い言葉で誘い出し、
判断能力がやや衰えている状態で公証役場につれていき、
遺言公正証書を作らせる。
軽い認知症の方であれば、初対面の方と会う際には
気丈に振る舞うので、公証人も数十分程度の面談では、
判断能力が低下していることは、気付かない。
そうして、本人の判断応力の有無に疑いが生じている状態でも
遺言書は書き換えられてしまう。

子供同士(兄弟間)で不信感があるから、
ある日長男が本人を連れ出し遺言公正証書を作る。
そしたら今度は長女がそれを察して、また連れ出して書き換えさせる・・・
といった具合の書き換え合戦だ。

この様な無用な争いを防げる可能性があるのが、
『家族信託』の活用だ。

親が元気で、きちんと判断を下せるうちに、
遺言を書く感覚で、信頼できる子供たちと
家族信託の契約を組むことで、
その後の変更や撤回ができないようにできる。

『撤回不能信託』と呼んでいる方もいる。

『家族信託』は、円満・円滑な資産承継を
実現するために活用すべきであるが、
これを悪用して、特定の相続人(例えば長男)が
家族信託を導入して、その後は長男の合意が無ければ
修正・変更・撤回できないようにすることができてしまうので要注意だ。

そういう、かえって争族を巻き起こしかねない案件は、
ミヤタは極力受任しないようにしている。

できれば、親の威光があるうちに、子供たち全員を集めて
今後の老後の過ごし方、将来の資産承継について
きちんと家族内で伝えることをしていただきたい。

推定相続人が共通の認識・価値観・情報を共有することで
相続争い(争族)は、かなり防ぐことができると考える。

『争族』とは無縁な、円満・円滑な相続が、
一つでも多く実現しますように・・・。

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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