9/3付日本経済新聞の朝刊記事によると、三井住友信託銀行とカーディフ損害保険(仏BNPパリバ系)は、新型コロナウイルスの影響で住宅ローンの利用者が失業した場合、返済を一部免除する仕組みを導入するとのこと。
これまで、多くの金融機関は、コロナ禍において経済的な打撃を受けた住宅ローン利用者を保護するため、一時的な返済の猶予や減額で対応する動きをしてきた。
しかし、免除にまで踏み込む対応をするのは、大手金融機関で初となる。
三井住友信託は、コロナ禍において勤務先の倒産や経営状況悪化による解雇などで住宅ローンの利用者が失業した際、1回で最長3カ月分の返済を肩代わりする。
期間中にボーナス返済月が含まれていても免除の対象になる。
具体的には、今年の11月以降に「疾病特約付き」の住宅ローンを契約した人が対象になる。
三井住友信託が、カーディフ損保に保険料を払い、保険金という形で免除額を手当てするので、ローンの利用者に追加負担は生じないとのこと。
三井住友信託としては、保険料が持ち出しとなるが、契約者の半数以上が疾病特約付きの住宅ローンを選択している状況を踏まえ、返済猶予や減額よりも、このようなコロナ禍対応にさらに一歩踏み込んだ補償サービスを盛り込むことで、競争が激化する住宅ローン市場における差別化で顧客基盤の拡大を狙うようだ。
雇用不安が広がるなか、住宅購入をためらう人は多い中、失業しても一部の返済額を免除する住宅ローンが増えれば、冷え込む住宅市場を下支えする効果が期待できる。
カーディフ生命保険の調査によると、住宅ローン利用者の約7割が返済に不安を抱えており、そのうちの25%が失業を懸念しており、住宅の購入をためらう大きな要因になっている。
金融庁も、金融機関に対し、コロナで影響を受けた個人の住宅ローンの条件変更に柔軟に対応するよう求めており、同庁によると、3月から7月までに条件変更の申し込みが約2万2000件あり、既に半数以上が見直しを終えたそうだ。
もっとも、条件変更で毎月の返済額を減らすと、その分元本の減りは遅くなり、支払う金利の総額は増える。返済の猶予が認められても最低限、金利相当分は支払わなければならず、一定の負担は残るので、手放しで喜べるわけではない。
長期化するコロナ禍において、住宅ローン利用者がより不安を払しょくできるような、各金融機関の更なる利用者目線の対応が求められていくことは間違いない。