2021年7月14付読売新聞朝刊一面の記事によりますと、国土交通省は、老朽マンションの増加に歯止めをかける狙いで、築年数の経過した古いマンションの建て替え促進策を導入する、という。
建物の階数を増やせる特例を受けやすくし、管理組合が増床分を販売できるようにすることで、区分所有者の経済的負担を減らし、区分所有者の合意を促す。
マンションの建て替えに際し、階数を増やせるのは、1981年以前の旧耐震基準で建設された「耐震不足」の物件に限られているが、国交省は省令・告示を年内に改正し、新たに次の4つの要件を加える方針だ。
その4要件とは、「外壁の劣化」「防火体制の不足」「配管設備の劣化」「バリアフリー未対応」であり、これについては、建物の規模に応じて1級建築士などの有資格者が調査・判断する形になる。
そして、いずれか一つの要件に該当すれば容積率を緩和する特例を受けられるようにする。
各要件の大まかな内容は、次のとおり。
「外壁の劣化」は、ひび割れやはがれが一定以上あること。
「防火体制の不足」は、非常用進入口の未設置などを指す。
「配管設備の劣化」は、天井裏の排水管で2か所以上の漏水があること。
「バリアフリー未対応」は、3階建て以上の物件でエレベーターがないほか、各戸玄関の幅が75センチ未満などが該当するとのこと。
この特定が適用されると、総床面積を2~3割程度増やせる可能性があり、実際にどれだけ増床できるかはマンションの立地によるが、10階建てのマンションだと12~13階建てに建て替えることができるかもしれない。
増床できた区分所有建物部分は、マンションの管理組合が不動産会社などに売却し、建て替え資金に充てることが想定されている。
この手法により、手元資金が十分ではない管理組合でも建て替えを決断しやすくなる。
区分所有法という法律によれば、各部屋のオーナー(区分所有者数)の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成による決議がある場合には、マンションを取り壊し、新しいマンションに建て替えることが可能となる。
建て替えにあたり、各区分所有者には新たな費用の負担を迫られることになり、これがネックとなって住民の8割の賛成を得ることができず、老朽化が進むケースは全国で後を絶たない。
適正な修繕計画が実行されないままでは、壁面の崩落・排水管の破損・漏水等の事故リスクが増すばかりではなく、不動産価値の低下、治安悪化、管理組合の形骸化、管理費・修繕費の滞納といった悪循環が起こり得る。
少子化・超高齢化に伴う人口減少を迎えるこれからの日本にとって、優れた国策により、老朽化マンションの再生・建替えを進めることは急務だ。