2023年1月23日付朝日新聞朝刊1面記事によると、法定相続人がいない等の理由で、遺産が国庫に帰属するケースが増えているという。
2021年度は、その額が647億円と過去最高で、過去10年で倍増したという。
法定相続人(配偶者・子や孫・兄弟・甥姪)が誰もおらず、かつ遺言も無い場合、最終的にはその遺産は国のものになる。
具体的には、下記の流れになる。
①利害関係人が家庭裁判所に「相続財産管理人選任申立て」をする。
②「相続財産管理人」(原則として弁護士が選任される)が未払いの税金・医療費・公共料金・債務などを返済・清算する。
③家庭裁判所の相続人を捜索するための「公告」の手続きを経て、一定の期間内に相続人である権利を主張する者がいないかを確認する。
④「被相続人と生計を同じくしていた者」や「被相続人の療養看護に努めた者」など被相続人と特別の縁故があった者(これを「特別縁故者」という。)がいれば、家庭裁判所の判断に基づいてその者に財産を分与する。
⑤残った遺産は、国庫に帰属する。
相続財産管理人の選任申立ては、2021年で約27,000件となっており、件数は10年前の1.7倍となっている。
遺産が少ないため、あるいは利害関係人がおらず、そのまま放置されるケースも相当数あることは推測される。
空き家問題などの所有者不明不動産を生む一つの要因にもなっている。
国庫に帰属する遺産が増えている背景には、単身高齢者(いわゆる“お一人様”)の増加や、未婚率の上昇がある。
さきの新聞記事によると、2020年の統計によると、50歳時の未婚率は、男性で28%、女性で18%と上昇が続いているという。
お子さんのいない夫婦は、いつか“お一人様”になる可能性が高いですので、未婚の方はもちろんのこと、お子さんのいない夫婦は、元気なうちに早めに遺言書を作ることをお勧めします。
同じ新聞の別の記事でも「相続人のいない人が遺言を書かないのは『全財産を国に遺贈する』という遺言を書いた状態と同じ」とあります。
遺言書を作らないことは、法定相続人がいるいないにかかわらず、遺産相続手続きを煩雑にすることは間違いありません。
特に法定相続人がいない人が遺言書作らない場合、「他人に迷惑をかけることになる」ことをしっかりと認識をしていただきたいと思います。
遺言書の作成や特別縁故者に関するご相談は、宮田総合法務事務所までお気軽に!