その他雑感 仕事関係 司法書士のつぶやき

「認知症でもあきらめないで」に込めた想い

4月 8, 2024

弊所では、環八と青梅街道の交差点に大きな赤い看板を掲出しております。
その看板には、「認知症でもあきらめないで 家族信託」というキャッチコピーを掲げております。

今回、この看板を見た方が誤解を招かないように、また小職がどのような意図をもってこの看板を掲出しているかの真意について、ご説明したいと思います。

 

この看板を見ると「重度の認知症でも家族信託ができるのではないか」という誤解・誤認を与えるのではないかと、心配される方もいるかもしれません。

「重度の認知症なら家族信託ができない」、これは紛れもない事実です。
重度の認知症、つまり本人の判断能力(物事を理解して何かを判断することができる能力)が著しく低下している方は、信託契約も遺言も任意後見も贈与契約も売買契約も何もできません。
できるのは法定後見制度の利用(成年後見人選任申立て)をするかどうかのみとなります。

「認知症でもあきらめないで 家族信託」というキャッチコピーにおいて、このような判断能力が著しく低下している方に対して、無理やり家族信託や遺言を作らせて報酬をいただこうというつもりは毛頭ありません。

むしろ、「認知症=何もできない」、そして今からできることと言えば「成年後見制度の利用しかない」という間違った先入観を持ってしまっている方、あるいは相談をした専門職からそのような短絡的な回答・アドバイスを受けた方々を数多く見ている中で、そのような状況に警鐘を鳴らしたいという想いを持っております

例えば、金融機関の窓口における行員・証券会社の社員、無料相談会における弁護士・司法書士等の法律専門職、高齢者に関する介護職の方から、「認知症になったら、成年後見制度を使って下さい」という杓子定規なアドバイスをされているケースが散見されるのです。
本人と面談をした上で、本人の状況を正確に把握する工程を踏めば、実はまだ他にもできることはあったかもしれないのに、その言葉を信じて疑わずに、今すぐ利用する必要のない成年後見の申立てをしてしまった家族を沢山知っています。
そして、その本人及び家族が、成年後見制度の負担や制約に悩まされたり、必ずしも成年後見制度を利用しなくても対応できたことを後から知って憤っている方も目にしてきました。

「認知症でもあきらめないで」は、前述の現状を憂い、短絡的な案内をしてしまう専門職(士業に限らず、区役所・市役所の高齢者福祉課や社会福祉協議会の職員など高齢者福祉・障害者福祉に携わる方なども含む)に対して警鐘を鳴らしたいという切なる想いも込めております。

認知症と診断をされても、元気に独居生活をしている方は少なくありません。
認知症外来に通い服薬をしながら、その進行を抑えながら頑張っている方も多いです。

「認知症」という概念は広いです。
「認知症=判断能力ナシ=何もできない=成年後見制度を利用すべき」という通り一遍のご案内では、本人及び家族のニーズに応え、本当の幸せを追求することはできません。
また、「残存能力の活用」というのは、成年後見制度の理念の1つでもあります。

「認知症」という言葉の概念に惑わされずに、本人にどの程度の判断能力が残っているのか、しっかりと見極めることが重要です。
弊所でも、ご家族からご相談を受けた際には、早い段階で本人に面談をして、どの程度の判断能力があるのかを確認させていただいております。

そして、コミュニケーションが取れ、言葉のキャッチボールがある程度しっかりできることが確認できれば、信託契約や遺言などの認知症対策・相続対策の施策の検討についてご家族を交えて進めるかどうかのご決断をいただきます。
施策の検討を進めることになりましたら、その実行までにご本人と何度もお打合せを重ねることになるので、そこでさらに詳細な本人の能力を見極めることができます。

仮に重度の認知症等の方であっても、悲観する必要はなく、また直ぐに後見人を就ける必要がある訳でもなく、本人及び家族が困った事態になった時に対処すれば十分であるケースも少なくありません。成年後見制度は、本当に必要なタイミングで利用すればよいのであって、判断能力が著しく低下した時点で、皆が後見制度を利用しなければならない訳ではありません。
弊所では、残念ながら既に判断能力が著しく低下した方を抱える家族に対して、成年後見制度を使うべきかどうか(後見制度を利用しなくても本人の生涯をしっかりとサポートし続けられるかどうか)、そのためにはどのようなことに気を付ければ良いのか、もし使うとしたらいつから利用するのが良いのか、などのご相談も多数承っております。
成年後見人業務と家族信託のコンサルティング業務を専門・得意とする弊所がご案内することで、お役に立てることも多いです。

 

以上のように、「認知症でもあきらめないで 家族信託」というキャッチコピーには、「認知症」という診断を受けた事実だけですべてを諦める必要はないという想いを込めております。

弊所では、本人の残存能力を見極め、まだ判断能力が十分に残っている方に対して、本人及び家族の想いを実現して、安心できる老後を実現し円満円滑な資産承継にまで繋げるという提案の中で、最適な施策を実行するためのお手伝いをしております。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

詳しいプロフィールはこちら

-その他雑感, 仕事関係, 司法書士のつぶやき
-, , ,

© 2024 家族信託なら宮田総合法務事務所【吉祥寺】無料法律相談を実施中! Powered by AFFINGER5