数日前、『工藤会トップ 複数土地を家族信託で差押え逃れ』といったニュースがありました。
良くないニュースに「家族信託」というフレーズが使われているので、家族信託に関わる専門職界隈では、ちょっとしたインパクトのあるニュースになっています。
事件の概要は、簡単に言うと次のとおりです。
特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップである野村悟被告が自分の持っている複数の土地を信託財産として、親族を受託者(=財産の管理者)とする信託契約を交わしていたというものです。
家族信託を実行すると、信託財産自体は野村被告のもので変わりはありませんが、不動産の登記名義人がシステム上「受託者」となりますので、その土地を野村被告の債権者(被害者)が直接差し押さえることができなくなるという事態が生じます。
究極的には、家族信託を実行したからと言って、野村被告が被害者への賠償金の支払いを逃れることはできませんが(当該不動産を直接差押え・競売をすることはできませんが、「信託受益権」という野村被告の財産に対しては差押え・強制執行ができますので)、債権者からすると不動産の差押え・強制執行(競売による換価)が直接的にできないので、回収がにしくくなる(差押え・強制執行の手間がより複雑になり手間と時間がかかる)という問題が生じます。
「家族信託」は、安心安全の老後生活の実現(認知症対策)、円満円滑な相続・事業承継の実現(争族対策)として、非常に注目を集め、実行される方が増えています。
このニュースが流れることで、「家族信託」に対するネガティブなイメージがつき、ご検討される方が減るというようなリスクはないと思いますが、同じようにやましい動機で家族信託を利用しようとされる方がでてくることは避けたいものです。
その一方で、債権者が債権を回収しやすい強制執行の仕組み、言い換えれば、悪質な犯罪者・加害者に対して被害者救済がよりしやすい仕組みを作るべく、これを機に民事執行法等の法改正・運用改善の機運が高まることに繋がれば良いと思います。
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