10/2の日本経済新聞朝刊の記事によると、山梨中央銀行は、高齢者向けの新しい信託サービスを始めたという。
「信託」は、本来の法律的な意味で言うと、金銭や不動産、株式等の有価証券、債権などの財産の管理を第三者に託す仕組み。
ただ、山梨中央銀行が今回の新サービスで預かるのは、財産ではなく、家族などへの「動画メッセージ」となる。
つまり、法律が規定する「信託」の仕組みを利用するのではなく(法律用語としての「信託」ではなく)、サービスとして、大切な人に残したい想いを動画で撮影・編集し、相続発生後時に同人に引き渡すというもの。
サービス名は、「大切なあなたへ『ありがとう』」というネーミング。
主に70歳以上をサービス提供の対象者とし、料金は1件、金165,000円だという。
動画の撮影に際しては、プロのカウンセラーによるカウンセリングを通じて、お客様が家族等に本当に伝えたい想いを引き出す。
地銀の預金は、預金者の相続発生で、相続人の居住地の金融機関に流出することが多い中で、この新サービスと“遺言信託サービス”(遺言の作成サポート&遺言執行サービス)を組合わせたご提案で、手数料収入を増やすと共に、お客様家族との関係強化を図り、相続預金の流出防止にも繋げたいようだ。
金融機関の生き残りをかけた様々なサービスメニューの開発は、とても良いことだろう。
ただ、老後が20年超の時代において(いつからを「老後」という定義の問題もあるが)、相続発生後のサービスを充実させるだけでは、高齢者世代はもちろん、その家族にとっても、満足度の高いサービスとなり得るのかは、難しいところ。
やはり、まず第一優先事項として大切なのは、高齢者が安心して20年超の老後を過ごせるための備え・仕組み作りだと思う。
そういう意味では、山梨中央銀行としては、「家族信託」「民事信託」のご提案も一緒にしていただきたいところだ。