マンション管理に関する諸問題

非居住者への“管理協力金”の徴収は「適法」との最高裁判決

2月 11, 2010

2010年1月26日、非居住者への“管理協力金”の徴収は「適法」との最高裁判決が出ました。

◆最高裁判決の概要◆
判決の要旨は、以下の通りです(出典 毎日新聞〈毎日jp〉より)。
マンションの管理組合が、部屋に住んでいない所有者だけに月2500円の協力金支払いを求められるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(堀籠幸男裁判長)は、2010年1月26日、協力金は適法と認めた。
小法廷は「管理組合運営を巡って不在所有者に一定の負担を求め、居住所有者との不公平を是正しようとしたことには必要性と合理性がある」と判断した。
不在所有者側の敗訴が確定した。
問題となったのは、71年から分譲された大阪市北区のマンション「中津リバーサイドコーポ」(4棟、全14階建て)。総戸数868戸のうち、約180戸は第三者に貸されたり空き室になって所有者が住んでいない。
管理組合運営の負担が居住所有者に集中していることに不満の声が上がり、04年3月の総会で不在所有者に月5000円の協力金を支払わせる規約改正を議決。
一部の不在所有者との和解内容を踏まえ、07年3月に月2500円に再改正した。不在所有者のうち計12戸を所有する5人が「規約は不公平だ」などと支払いを拒み、訴訟になっていた。
小法廷は「マンションの管理組合の運営費や業務は本来、組合員全員が平等に負担すべきだ」と指摘。
管理組合役員を務める居住者について「不在所有者を含む全員のためにマンションの保守管理に努め、良好な環境の維持を図っている」と認める一方、不在所有者は「役員になる義務を免れて組合活動に貢献していない。居住所有者が貢献した利益のみを享受している」と判断した。
そのうえで、不在所有者に一定の負担金を求めることに必要性と合理性を認め、「支払いを拒んでいるのは5人に過ぎず、金額も受忍すべき限度を超えない」として規約改正は有効と結論づけた。
この問題では計3件の訴訟が不在所有者側と管理組合から起こされ、2審・大阪高裁判決は1件について「月1000円の限度で協力金は有効」と認めたが、残り2件で「協力金を求める規約改正は無効」としており判断が分かれていた。

 

◆管理協力金とは◆
「管理協力金」とは、本来、非居住組合員(=非居住所有者、いわゆる賃貸物件のオーナー)に対する総会の招集通知等の書類送付や事務連絡等に居住組合員に比べ手間と費用がかかる為、通常の管理費や修繕積立金とは別に上乗せして非居住組合員に負担を求めるものです。
しかし、今日のマンション事情では、別の理由で「管理協力金」制度を導入したり、導入を検討しているマンションが多いと言えます。
管理規約上、理事は居住組合員に限るというマンションは多いです。
このため、賃貸オーナーの多いマンションでは、現に居住する所有者が持ち回りで理事を引き受けざるを得なくなります。
また、住民の高齢化で、そもそも理事の職務を担えない居住組合員も増えています。
その結果、非居住組合員は、同じマンション所有者であり、同じ管理費・修繕費の負担でありながら、理事にならないで済むという利益を享受しているという不公平感が大きくなっていました。
多くの場合、マンションの理事は、順番で嫌々引き受けること(輪番制)も少なくありません。
また、賃貸オーナーが増えれば増えるほど、残された居住組合員が理事の順番が回ってくるのが早くなります。
そこで、理事になれない非居住組合員や理事を断る居住組合員に対して、「管理協力金」等の名目で上乗せの経費負担を求めるケースや理事に対する報酬を支給する管理組合も増えてきています。

 

◆よりよいマンション管理のために◆
高度経済成長期頃に建設された築年数の古いマンションには、非居住組合員や高齢の居住組合員のいる割合が比較的多いです。
つまり、ただでさえ建物老朽化に伴う建物の維持管理・修繕の難しさがあるのに、それに加えてその難問に立ち向かうやる気のある居住組合員の数が少ないことが、さらに問題を難しくしています。
また、そういうマンションには、長年理事長を再任してきたいわゆる“ボス”や“主(ぬし)”がいて、理事会や総会を牛耳っているケースも多いです。
管理組合や理事会・総会が形骸化したマンションのたどる道の先は、いわゆる“ゴーストマンション”。老朽化した外観、暗いイメージの内装、手入れの不十分な敷地・・・。
“ゴーストマンション化”をいかに防ぐかが、多くのマンションが抱える問題です。
まずは理事会や総会で、現在の管理規約を精査したうえで、今できることは何かを考え、理事というものが嫌な“貧乏くじ”ではなく、魅力あるマンションを自分たちの手で作って行くんだというやりがいのある仕事にするための仕組みを考えていかなければなりません。
そのための一つの手段が、「管理協力金」の徴収や「役員報酬」の導入であるといえます。
国土交通省のまとめでは、2007年末の全国のマンション戸数は、約528万戸で、1300万人がマンションで暮らしているとのこと。
また、築年数30年を超えるマンションは、2011年には100万戸に達すると言われています。
そんな中、マンションの建替えや大規模修繕への取組みが求められるに加え、住民の高齢化対策、災害対策も急務と言えます。
それにはまず、非居住者組合員のみならず、居住非組合員(=賃借人)を含めたマンション管理・コミュニティー作りに対する参加意識をどう高めるかが大きな課題となります。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

詳しいプロフィールはこちら

-マンション管理に関する諸問題
-

© 2024 家族信託なら宮田総合法務事務所【吉祥寺】無料法律相談を実施中! Powered by AFFINGER5