遺言書作成(遺言公正証書作成・遺言執行者就任)

遺言の執行と遺言執行者の職務

7月 5, 2008

「遺言の執行」とは、遺言の内容を実現するための手続のことをいい、遺言執行者がいない場合、遺言の執行は原則として、相続人全員の協力のもとで行います。

したがって、相続人が大勢いたり、相続人の一部が遠方に居住していたり、行方不明だったりすると手続きに大変な手間と日数を要することになります。
また、遺言の内容に納得していない相続人がいるときなどには、一部の相続人の協力が得られず遺言内容の実現ができなかったり、相続手続きをきっかけに相続人間に感情の対立が生じたり、あるいは遺言の執行が公正になされない可能性もあります。
そこで、遺言者は、遺言内容を実現するために実際に手続きを行う者を遺言書の中であらかじめ指名しておくことができます。
この者を「遺言執行者」と言います。
遺言執行者の職務は下記に記載しますが、実際に金融機関を回って被相続人(死亡した遺言者)名義の預貯金・証券の口座解約をしたり、各種の債務・諸費用の支払いをすることが主な業務になります。
したがいまして、ご家族の中で金融機関等を回ったりできる方(物理的・時間的・能力的に可能な方)がいれば、家族(推定相続人である方が好ましいが、そうでなくても良いです)を遺言執行者に指定することも少なくありません。

一方で、金融機関を回ったりできる方がいない場合、又は家族にそのような負担をかけたくない場合などは、信頼できる法律専門職(司法書士・弁護士・行政書士)を遺言執行者に指定することも多いです(実務ではあまりないですが、理論上、遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます)。

遺言執行者に指定された者は、就任(就職)を承諾するかどうかは自由であり、また、指定された者が遺言者よりも先に死亡する場合もあるので、遺言で指定する場合はその点を考慮に入れる必要があります。

遺言によって遺言執行者が指定されていない場合には、相続発生後に家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求することもできます。
遺言執行者は、相続財産目録の作成、相続財産の管理、その他遺言内容の実現に必要な一切の行為をすることができます。
この場合は、相続人といえども遺言執行者の職務を妨害することはできず、相続財産の処分などはできなくなります。
遺言の執行に関する費用は、相続財産から当然に支払われます。
また、遺言執行者は、遺言執行報酬を相続財産から受け取ることもできますが、原則として、遺言の中で遺言執行者の報酬を定めます。
もし、遺言に報酬の定めがない場合には、遺言執行者の申立てにより、家庭裁判所が相続財産の状況やその他の事情を考慮して報酬額を定めることもできます。

 
【遺言執行者の職務】
・財産目録を作成し、これを相続人に交付します
・相続人の相続割合や遺産の分配方法にしたがった遺産の分配をします・(遺贈の遺言があれば)受遺者に対し財産を引渡し、不動産については所有権移転登記をします
・相続財産の不法占有者に対して明渡しを請求し、賃貸物件に滞納家賃があれば取立てをします
・認知の遺言については、就職の日から10日以内に戸籍の届出をします
・相続人廃除や廃除の取り消しの遺言がある場合は、家庭裁判所に申し立てをし、審判を経て戸籍の届出をします

 
【遺言執行者になれる者】
未成年者と破産者を除いては、誰でも遺言執行者になることができます
特に資格などは必要ありませんが、法律知識が豊富で手続きに慣れている法律専門職に依頼するのがよいでしょう(信託銀行等の金融機関を遺言執行者に指定しても金融資産の払戻・分配作業しかやってくれませんのでご注意ください)。
なお、法律上の規定で遺言執行者になれない人を指定したり、遺言事項でない事項について遺言執行者を指定しても、その指定は効力を生じないことになります。

 
【遺言執行者が必ず必要となる場合】
・相続人の廃除及び廃除の取消し
・子の認知
上記の場合は、遺言執行者が必ず必要となります。
法定相続人だけでは、公正な遺言執行が期待できないとみて、中立な立場の遺言執行者が必要となるからです。

 

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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