遺言書作成(遺言公正証書作成・遺言執行者就任)

令和7年に実施予定の「公証制度の電子化(公正証書のデジタル化)」の展望について

法務省は、令和3年6月18日閣議決定した「規制改革実施計画」において、令和7年の秋頃までに公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化を目指すとしました。
これにより、公証役場における公証事務については、将来的に次のような手続きになると予想されています。

電子公証制度の概要は、「リモート」と「対面」の2種類の手続きに分かれますので、簡単に2つの手続きについてご紹介します。

 

(1)対面による公証手続き

従来と同様、当事者(遺言者や契約当事者)は公証役場に日時を予約の上で、訪問します。

公正証書で作成する遺言や契約書の原本は、「書面」ではなく電子データで作成・保存することになりますので、遺言者や契約当事者の署名は、タブレット端末にタッチペン等で署名することになるでしょう。それに伴い、実印押印・印鑑証明書の提出という必要性は無くなり、原則として写真付身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード)の提示による本人確認手続きになると思われます。

なお、手続き完了後の公正証書の正本・謄本については、紙で交付されることになるので、従来の取扱いと変わらないといえます。

 

(2)リモートによる公証手続き

公証人が遠隔地の当事者とWEB会議システムを利用して、画面越しに目視で本人確認しつつ、画面共有しながらその場で文書の内容を確認しながら作成することになります。当事者については、写真や録画で証拠を保存します。

このリモートによる公証手続きが可能となることで、「公証人の出張による公証手続き」という概念が無くなるかもしれません。自宅でも、高齢者施設でも、病院でも、ノートパソコンの持ち込みとwifi環境が整っていれば、少ない負担で公正証書の作成を目指せることになるでしょう。

リモートによるメリットが見込まれる反面、画面越しによるリモートでの作成リスクも想定されます。それは、高齢の方の遺言や任意後見契約、家族信託の契約などをする場合、高齢の当事者の意思確認(理解力・判断能力がしっかりしていることの確認)や周囲の人に操られて無理やり作らされるリスクが無いかを公証人がよりしっかりと確認しなければならないという問題です。つまり、耳が遠い方や大きい声で発語が上手にできない方を含めて意思確認が画面越しでは難航する場合は、上記(1)の対面による公証手続きを目指すことになります。また、より若くて元気なうちに公正証書の手続きを済ませておくことの重要性が増すかもしれません。

なお、従来の公証人業務は、都道府県単位となっており、東京の公証人は越境して東京都以外に出張して公証手続きはできませんでしたが、新しい制度下では都道府県単位の管轄という概念が無くなり、沖縄在住の方が北海道の公証役場でリモート作成も可能になると思われます。

その結果、優秀な公証人、親切・丁寧で感じの良い公証人に人気が集中するという、公的機関である公証役場にも自由競争の原理が働くかもしれません。特に地方の公証役場は、数も少なく、家族信託などの最先端の法制度に対応できていない公証人もいるなど、公証人のスキルの高低が実際の手続きの現場で支障をきたす場面もあったので、管轄の制約が無く全国対応ができることは、利用する側にとってはとても大きなメリットになるでしょう。

 

以上、2年後である令和7年度をめどに実施される予定の「公証制度の電子化(公正証書のデジタル化)」の展望について、ご紹介しました。

ただ、今後の更なるIT技術の発達などにより、現時点の展望とは異なる仕組みになることもあるかもしれませんので、今後の動向にも注目したいところです。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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