相続登記・不動産登記(売買、贈与、抵当権設定・抹消など)

相続登記の義務化(令和6年4月1日より開始)について

2月 13, 2022

民法と不動産登記法の改正により、これまで義務ではなかった相続登記が義務化されます。

令和6年(2024年)4月1日より施行される改正法のポイントについて分かりやすく紹介します!

【ポイント】 
1.相続登記の義務化が令和6年4月1日より開始
2.過去の相続にも遡って義務化適用
3.義務違反には金10万円以下の過料の可能性
4.相続登記義務化の他にも大きな改正を予定

 

1.相続登記義務化が令和6年4月1日より開始

【3年以内に相続登記をする義務】
民法と不動産登記法の改正により、これまで義務ではなかった相続登記が義務化されます。
不動産の所有者に相続が発生した場合、相続または遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は、「自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に、下記㋐㋑㋒いずれかの相続登記の申請等をすることが義務付けられました。

㋐「相続」を原因とする所有権移転登記(遺言に基づく登記申請または遺産分割協議に基づく登記申請もしくは法定相続分割合による登記申請)
㋑「遺贈」を原因とする所有権移転登記
㋒「相続人申告登記」の申し出

また、合わせて㋐のうち「法定相続分割合による登記申請」または㋒「相続人申告登記」がなされた後で、遺産分割協議が成立したときは、「遺産分割の日から3年以内」に遺産分割協議に基づく登記申請をすることが、追加的に義務づけられました。

 

【「相続人申告登記」の制度の新設】
法定相続人間の遺産分割協議がまとまらず、3年以内に相続登記ができないときは、自分が相続人であること戸籍で示して申告をすることで、相続登記義務を免れる制度が新設されました。
これを「相続人申告登記」と言います。

この登記が申請された場合には、法務局(登記官)が登記簿に申告をした者の住所・氏名住所を記載します。
この「相続人申告登記」は、相続登記そのものではなく、あくまで登記義務を免れることができる予備的な制度と言えます。
そのため、相続発生により相続人に新たに所有権が移転したということを示すものではなく、不動産所有者に相続が発生している旨を表している(公示している)という仕組みです。
したがいまして、その後遺産分割協議が成立し、不動産を承継する相続人が決まった場合、遺産分割協議がまとまった日から3年以内に、改めて遺産分割に基づく相続登記申請を行うことになります。

 

【相続登記の義務化の対象者】
相続登記の義務化の対象者は、下記になります。

1. 相続により不動産を取得した相続人(相続登記をすべき相続人)
2. 遺言による指定により不動産を取得した相続人(相続登記をすべき相続人)
3. 遺贈により不動産を取得した相続人(遺贈による登記をすべき相続人)

※ 遺贈(遺言による指定)により不動産を取得する者でも、法定相続人でない者は義務の対象者になっておりません。

なお、遺産分割協議が成立する前は、被相続人名義の不動産を法定相続人全員が承継(共有)している状態となりますので、この場合は、法定相続人全員が相続登記の義務化の対象者となります。
したがって、遺産分割協議が長引く場合は、法定相続分での相続登記の申請又は改正不動産登記法によって新設された前述の「相続人申告登記」の申請のいずれかを検討しなければなりません。

 

【相続に関する登記手続きが一部簡略化】
相続登記の義務化・「相続人申告登記」の新設に伴い、相続に関する登記手続きが一部簡略化されることになります。

①相続人に対して相続財産の一部を「遺贈」する内容の遺言があった場合、従来の登記手続きにおいては、不動産の遺贈を受ける者(受遺者)と遺言執行者(遺言執行者が選任されていない場合は法定相続人全員)の協力がないと遺贈による所有権移転登記手続きができませんでした。
つまり、非協力的・敵対的な相続人がいると遺贈による所有権移転登記手続きが滞るリスクがありました。
そこで、相続人に対する遺贈による所有権移転登記は、受遺者が単独で手続きをすることができることになります(相続人以外に対する遺贈は、従来通り遺言執行者又は相続人全員の協力が必要となります)。

②法定相続分による相続登記後、後日遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議に基づく所有権移転登記申請も、従来の登記手続きにおいては、不動産を承継する相続人だけではなく、他の相続人全員の協力がなければ登記ができませんでした。
ところが、今回の法改正により、不動産を承継する相続人が単独で所有権移転登記申請をすることができることになります。

 

※ 相続登記の義務化と時期はズレますが、登記簿上の所有者の住所・氏名に変更があった場合、変更の日から2年以内にその変更登記の申請をすることが義務化されます。
この義務化の開始は、令和8年(2026年)までに実施されることになっています(施行日はまだ未定ですが、今後政令で定められます)。

 

2.過去の相続にも遡って義務化適用

相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があった場合についても、遡って適用されます。
そこで、「3年以内」の相続登記の起算日は、下記のとおりとなります。

㋐施行日
㋑自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日

つまり、上記㋐㋑のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

 

3.義務違反には金10万円以下の過料の可能性

「正当な理由」が無いにもかかわらず、相続登記義務に違反した場合は、金10万円以下「過料」の制裁対象となります。
なお、手続きとしては、あらかじめ登記官が、履行期間を経過した相続人に対して催告し、それでも正当な理由なく登記をしなかった場合に過料に処することとされています(「正当な理由」の判断基準や罰則の運用実務については、まだ詳細が分かっていません。)。

 

4.相続登記義務化の他にも大きな改正を予定

一連の民法・不動産登記法の改正において、相続登記の義務化以外にも、大きな改正や新設される制度があります。

【相続土地国庫帰属制度の創設】
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(通称「相続土地国庫帰属法」)が成立し、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者(共有の場合は共有者全員)は、所定の要件を満たし法務大臣(法務局)の承認を受けてその土地を国庫に帰属させることができる制度が新設されます。
この制度は、令和5年4月27日より施行されることが決定しております。

【 土地利用に関連する民法の規律 の見直し】
土地利用の円滑化を目指し、下記の4点を主要ポイントとする土地利用に関する民法の規律の見直しが予定されております。
この運用については、令和5年4月1日より開始されることが決定しております。

① 財産管理制度の見直し
② 共有制度の見直し
③ 相隣関係規定の見直し
④ 相続制度の見直し

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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