不動産を売却する場合、1つの選択肢として「入札方式」という手法があります。
これは複数の購入希望者を募る中で、最も高い購入金額を提示した人が不動産を購入できる(落札する)という売却方法です。
そこで今回は、個人の不動産売却にも使える「入札方式」という不動産の売却手法について、メリットや失敗しないためのコツなどについて簡単にご紹介します。
◆一般的なオークションと「入札方式」の違い
多くの方がイメージする一般的なオークションは、著名な絵画等の美術品だったり、芸能人が出品するチャリティーオークションだったりするかもしれません。
このイメージのオークションは、購入希望者がオークション会場に集まり(あるいは購入希望者がインターネット上でアクセスをして)、購入希望価格を提示し合い、購入希望者が落札価格を競い合うものだと思います。
何度でも購入希望額を入札できるので、購入希望者が競い合った結果、落札価格がどんどん上がっていくというのがこの売却方法の魅力の一つでしょう。このような方式を「競り上がり方式」「せり売り方式」と言ったりします。
ただ、個人が所有する自宅やアパートなどの一般的な不動産をこのようなのオークション形式で売却することはあまり多くはありませんので、今回ご紹介する売却方法は、このような方法とは少々異なります。
今回ご紹介する「入札方式」は、入札期間を設け、その期限までに入札できるのは一人(1社)につき1回限りで、その中で最も高い購入希望額を入札した購入希望者が落札できるという形態です。
このような方式を「ポスティング方式」と呼ぶこともあります。
◆入札方式のメリット
通常の不動産売却は、不動産仲介業者が売主からの媒介契約に基づき、購入希望者を探す手法になります。
購入希望者とは、あくまで相対(1対1)の交渉になりますので、購入希望者はできる限り自分にとって有利な条件を引き出そうと値引き交渉などを積極的にしてくるケースは少なくありません。
しかし、入札方式であれば、相対での交渉という概念はありませんので、純粋に高値を提示してくれた購入希望者に売却することになります。売主にとっては、煩わしい値引き交渉の余地は無く、ノンストレスとなります。
では、どのような不動産がこの入札方式に適しているかというと、代表例は下記のとおりです。
・購入需要が高いエリアにある古家付土地をそのまま売りたいケース
・購入需要が高いタワーマンションをリフォームせずに現況有姿で売りたいケース
・不動産会社によって時価査定額に大きな開きがある不動産
・個人への売却が難しい広い土地
上記のような不動産については、相対の交渉ではなく、広く購入希望者を募る入札方式の方がより高値を目指すことができると言えます。
不動産仲介業者1社に専任専属媒介契約で買主を見付けようとすると、後でもっと高値を提示する購入希望者がいたのではないか、と不安や後悔の念が生じることもあるかもしれませんが、この入札方式だと、最善は尽くせたという想い・納得感を持てるかもしれません。
現に、不動産業者の平均査定額の2割増しの高値で売却できたケースもあります。
◆入札方式のデメリット
入札方式では、落札可能性が読めません。また古家付土地や広大な土地であることも多く一般個人が取り扱いにくい不動産であることも多いため、個人の購入希望者は集まりにくく、不動産業者・ハウスメーカー等が売却物件の“仕入れ”として入札に参加するのが一般的と言えます。
つまり、プロの不動産業者が仕入れ価格で落札しようとしますので、自己資金を投下して、古家を解体・整地してきれいな更地にしたり、リフォーム・リノベーションをして新築のようなマンションの部屋にして、個人の購入希望者を募る場合に比べれば、低い売却価格にならざるを得ないことは、覚悟しなければなりません。
ただ、売却前に数百万円規模の自己資金を投下して、より高値で個人の購入希望者を探すという手法を選択される方はそう多くありませんので、自己資金の“持ち出し”をせずに、個人所有の不動産売却を売却したいケースにおいては、有効な手段となり得るでしょう。
◆入札方式で失敗しないコツ
入札方式で心配しないようにするには、いくつかの注意点・コツがございますので、簡潔にご紹介します。
㋐信頼できる主幹(入札を取り仕切る立場)に依頼する
不動産業者が「主幹」(入札を取り仕切る立場)となるケースが多いようですが、法律専門職が主幹となることもあります。
“出来レース”にならないように、信頼できる主幹がしっかりと入札方式を取り仕切ることが大切です。
かくいう弊所でも入札方式の主幹を務め、高値で売却できた実績がございます。
㋑最低入札価格を設定する
あらかじめ信頼できる不動産仲介業者など数社に時価査定を依頼し、売買想定価格帯を把握しておくことは重要です。
その相場観を踏まえ、入札条件としての最低入札価格を設定します。適切な最低入札価格を設定すれば、売却希望額を下回る価格で落札されることはありませんし、購入希望者が現れずに不発で終わるリスクを回避できる可能性も高いと言えます。
③指名競争入札の方法を採用する(信頼できる不動産業者にだけ声をかける)
「指名競争入札」とは、あらかじめ定められた参加資格を満たしている人だけが入札に参加できる方法です。
つまり、購入希望者を募る作業は、広く一般に公募するのではなく、信頼できる不動産仲介業者やハウスメーカー等に主幹から声掛けをすることで、質の悪い不動産業者などが入札してくることを回避することができるでしょう。
以上、今回は、「入札方式」という不動産の売却手法について、メリットや失敗しないためのコツなどについて簡単にご紹介しました。
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