成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

被後見人名義の不動産の換価処分と後見監督人・家裁の同意

11月 17, 2009

被後見人名義の不動産の処分については、後見監督人の同意や家庭裁判所の許可が必要な場合とそうでない場合があります。
以下に場合分けして、整理いたします。

(1)任意後見人が就任している(任意後見監督人が就任している)場合
居住用不動産(現在の自宅はもちろん、過去において自宅だった不動産も含まれることに注意)であっても、非居住用不動産であっても、原則として任意後見監督人の同意も家庭裁判所の許可も不要です。
ただし、監督人の同意も家裁の許可も必要ないからと言って、合理的理由のない不動産の処分は、後で問題視されることは十分にありますので、好き勝手にできる訳ではないことは認識すべきです(任意後見監督人への定期的な報告の中で、保有資産構成が変わったことが発覚しますので、合理的な理由が無い換価処分については弁明を求められ、場合によっては後見人を辞任するように勧告されることもあり得ます)
なお、任意後見契約において、監督人の同意を要する旨の規定があれば、監督人の同意が必要になります。

 

(2)法定後見人が就任している場合

a)非居住用不動産の場合
後見監督人が選任されていれば監督人の同意が必要です(民法第864条・第13条1項※ )。家庭裁判所の許可は不要です。
所有権移転登記手続きに監督人の同意書(実印押印)と監督人個人の印鑑証明書が必要になります。
なお、監督人がいなければ、家裁の許可も不要ですから、原則後見人の判断で自由に処分できることになります。
ただし、家裁の許可が必要ないからと言って、合理的理由のない不動産の処分は、後で問題視されることは十分にありうるのは上記(1)と同じ考え方です。

b)居住用財産の場合
後見監督人(保佐監督人・補助監督人も含む)及び家裁の許可が必要です(民法第859条の3 ※)。
家裁に対する許可申立ての段階で、後見監督人(保佐監督人・補助監督人)の同意書が必要となりますので、売買契約締結時や所有権移転登記手続きの添付書類においては、監督人の同意書は不要です(家裁の処分許可が出ていれば、当然後見監督人の同意があったことが明らかなので)。
つまり、家庭裁判所の処分許可だけで登記手続きを進めることになります。
以上、後見監督人の同意や家庭裁判所の許可の要否についてまとめましたが、これはあくまで法律的に要求されているかどうかであって、後見人が誠意をもってきちんと職務を遂行していることをアピールする意味でも、できる限り事前に後見監督人や家庭裁判所に話だけでも通しておくことをお勧めします

※ 居住用不動産であろうが非居住用不動産であろうが、また、後見監督人や家庭裁判所の許可が必要であろうが必要でなかろうが、不動産の売却価格が適正価格であるかどうかを明らかにするために、事前に複数の不動産業者に査定(売出想定価格の算出)をしてもらうことを心掛けましょう!

 

※参考条文
●民法第864条を一部抜粋
『後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。』

●第13条1項を一部抜粋
『三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。』

●民法第859条の3
『成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。』(⇒この規定が、民法第852条、第876条の3、第876の8により、後見監督人・保佐監督人・補助監督人にも準用されています。)

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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