生涯独身、又は離婚をし、若しくは配偶者に先立たれたため、独居で暮らしている方、いわゆる“おひとり様”と呼ばれる方、特に高齢の“おひとり様”の中には、将来のこと・自分の老後を考えて、何か準備・対策をしておくべきなのかお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、高齢の“おひとり様”の老い支度としてすべきことをご紹介します。
身元保証人・身元引受人を決めておく
高齢の“おひとり様”にとって一つの懸念が、アパートの新規契約や更新契約時の「連帯保証人」、入院時の「身元保証人」や「身元引受人」が求められる場面への対応です。
アパート・賃貸マンションにおける「連帯保証人」は、賃貸不動産専門の保証会社に保証料を払えば、スムーズに入居できるケースが多いですが、入院となると、親友や親戚に頼らざるを得ないなど、誰に「身元保証人」を頼めるかが、課題となり得ます。
さらに、よりご高齢になり、介護施設への入居を検討する際にも「身元保証人」や「身元引受人」が求められることを想定しなければなりません。
このように、転居・入院・入所の際に手続きが進まず困ならいように、事前に信頼できる親友や保証会社を選んでおくと安心です。
ただ、親友・友人ですと、同世代のこともありますので、いざという時に頼ることができない事態もあるでしょう。
そう考えますと、民間の身元保証会社(身元保証機関)を選んでおくことも大きな選択肢になります。
高齢者の入院・入所の際に身元保証をしてくれる一般社団法人やNPO、民間企業などは、昔からあります。
しかし、玉石混交で、クレームや詐欺的被害の声が多く聞こえるのもこの業界の特徴ですので、信頼できる身元保証会社(身元保証機関)を見極める「目」も重要です。
また、後述しますが、司法書士・行政書士等の法律専門家と「任意後見契約」や「見守り契約」を締結しておくことで、実質的に身元保証人・身元引受人の役割を担ってもらえるケースもありますので、民間の身元保証会社(身元保証機関)に加え、成年後見人業務に力を入れている法律専門職も選択肢の一つとして検討されるのも良いでしょう。
大切なことは、一人で選ばず、できれば親友や親戚と一緒に、複数の身元保証会社(身元保証機関)・法律専門職から話を聞き、下記の点も踏まえて、慎重に検討すべきでしょう。
- 費用体系が明確であるか
(基本料が安くてもオプションで追加費用が発生する場合は要注意) - 必要書類や手続きの流れ・スケジュール感のご案内が明確か
(説明があやふやな場合は要注意) - 電話や郵便等のやり取りが迅速か
(折返しの連絡が遅い、書類作成に日数がかかり過ぎるのは要注意) - 担当者が長期的に担ってくれるか
(担当者や社員の短期間で入れ替わるところは要注意)
法律専門職と任意後見契約を交わしておく
高齢の“おひとり様”にとっての最大の課題と言ってもいいのが、将来において、大病や認知症などで判断能力が低下した場合における対応です。
自分で財産管理や契約関係ができなくなった場合に、自分に代わって財産管理や契約等の法律行為の代理、入院・入所・介護プランの策定などを担ってくれるのが「後見人」です。
自分の大切な老後を託す「後見人」を自分の信頼できる人にあらかじめ“契約”で頼んでおく仕組みが「任意後見制度」です。
あらかじめ頼んでおかないと、家庭裁判所が後見人を選任する権限を持つので、自分の全く知らない司法書士等の専門職が後見人に就きます。
専門職後見人には、自分との相性も含め、“アタリ”・“ハズレ”がありますので、自分の人生の集大成の時期に‟ギャンブル“するリスクを認識すべきです。
「信頼できる人」は、自分より15歳くらい年下の友人や親戚でも良いですし、成年後見業務に力を入れている司法書士等の法律専門職でもよいでしょう。
そんな「信頼できる人」との間で任意後見契約を交わしておき、もし将来において自分の判断能力に低下がみられサポートが必要になった時に備えておくと、自分の将来に大きな安心が得られることでしょう。
もちろん、“ピンピンコロリ”で最期を迎えることができれば、後見人を就けずに済むので、この任意後見契約は、もしもの際の“保険”という意味合いがあります。
つまり、この任意後見契約は、元気な今のうちに契約だけしておき、将来後見人が必要となったタイミングで、家庭裁判所に申立てをして任意後見契約を発効させることにより、正式に任意後見人が就任することになります。
独居の方は“見守りサービス”の利用も検討したい
一人暮らしをしている高齢の“おひとり様”は、いつサポートが必要になるかわかりません。
ある日突然部屋の中で倒れても、なかなか発見・救急搬送されません。
したがいまして、毎日の生活を平穏無事に過ごしているか、見守りをしてくれるサービスを申し込むべきかどうかも要検討です。
地域によっては、行政サービスの一環で定期的に連絡又は訪問をしてくれるところもあるようです。
その一方で、セキュリティ会社(警備会社)や郵便局、新聞配達業者など、今では様々な民間企業が様々な見守りサービスを提供しておりますので、沢山の選択肢から適切なものを選ぶのも良策です。
なお、この見守りサービスにより、“おひとり様”の不具合・異常が発見された際の緊急連絡先として、前述の任意後見契約の相手(これを「任意後見受任者」と言います)を登録しておくことで、サポートが本当に必要になった時に、任意後見契約を発効できるようにする意義があります。
したがいまして、既に施設入所されている方は、何かあれば施設側から任意後見受任者宛に連絡が入るようにしておけば、見守りサービスの利用はする必要が無い場合がほとんどでしょう。
遺言書や死後事務委任契約で立つ鳥あとを濁さず
“おひとり様”の場合、法律上の相続人がいないケースと、法律上の相続人はいるが疎遠で誰も頼れないケースがあります。
前者の場合は、「遺言」で自分亡き後の財産の行く末をしていておくことが重要です。
そうしないと、自分の遺産は法律上国庫に帰属することにはなりますが、自動的に国の財産になる訳ではないので、その手続きは複雑ですし、そもそも誰かが家庭裁判所に申立てをしない限り、手続きは何も始まりません。
つまり、“おひとり様”が亡くなった後の財産は、遺言を残して後処理を頼んでおかないと、そのまま長時間放置され、多くの方に迷惑がかかる可能性があります。
周囲の方に迷惑をかけないためにも、また自分の遺産が誰かに役立つように、遺言で遺産の行く末をしっかりを指定しておくことをお勧めします。
また、親族が担うことが一般的である財産(遺産)に関すること以外の手続全般、具体的には、自分自身の葬儀・納骨・永代供養のことなどについても、誰かに託しておくことも良策です。
身元保証会社(身元保証機関)や法律専門職との間で「死後事務委任契約」を交わしておくことで、これらの手続や訃報を親友・親戚に連絡することなどについて、頼んでおくことをお勧めします。
以上、今回は高齢の“おひとり様”の老い支度としてすべきことの一部をご紹介しました。
必要な対策を早めに講じることで、将来への不安を和らげることができます。
安心の老後と自分らしい最期を迎えるためにも、今から勇気ある第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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