商業登記・企業法務

有限責任事業組合(日本版LLP) その2 ≪仕組み≫

3月 30, 2007

(1)組合員
LLPの組合員になるための特別な要件はなく、個人又は法人は1円以上の出資をすれば組合員になることができます(国内非居住者や外国法人も可能)。
ただし、民法組合がLLPの組合員になることはできません。
尚、法人が組合員になった場合、自然人を「職務執行者」として選任する必要があります。
組合員の新規加入は、組合員全員の一致で決定します。
任意の脱退については、原則として止むを得ない事由がある場合にのみ可能です。
組合員の出資は、金銭その他の財産(貸借対照表に計上可能な現物資産=動産、不動産、有価証券、特許権・実用新案・商標権等知的財産権を含む)のみに限られ、労務出費や信用出費は認めないとされています。
これは、組合員の有限責任制への配慮によるものですが、労務出資や信用出費に相当する部分の調整・勘案は、内部自治による出資比率にとらわれない議決権・損益分配で柔軟に対応できます。

(2)事業体としての機能
(A)契約主体性
LLPは法人格を持たないので、組合名のみでの契約はできませんが、組合員各自が組合名の肩書付名前で契約することで、その効果はLLPの全組合員に及びます。
例: 『〇〇有限責任事業組合  組合員 ××株式会社 職務執行者 山田太郎 印 』

(B)組合財産の所有形態
LLPは、知的財産権や不動産を組合財産として保有できるが、その所有形態は「合有」とされる。
そのため、観念的持分はあるものの、組合員が自由に処分したり分割請求することはできませんし、組合員個々の債権者が組合財産を差押えることもできません。

(3)組織変更
LLPは、民法組合の特例制度で、法人格を持たないため、法人格のある組織形態(株式会社等)への組織変更はできません。
したがって、将来的に株式会社化・株式公開(IPO)を計画しているのであれば、合同会社による事業モデルの方が好ましいといえます。

(4)組合契約書
有限責任事業組合契約は、LLPの運営の基盤となることを定めます。
組合員は、LLP法で定められた事項(絶対的記載事項)や組合員が任意に定める事項(任意的記載事項)等を契約書に記載し、全員が実印で署名又は記名押印することが必要です。これに合わせ、個人であれば印鑑証明書、法人であれば資格証明書・印鑑証明書を準備します。
なお、LLP契約書の絶対的記載事項は、以下のとおりです。
a)組合の事業
b)組合の名称
c)組合の事務所の所在地
d)組合員の氏名(名称)・住所
e)合契約の効力が発生する年月日
f)組合の存続期間
g)組合員の出資の目的とその価格
h)組合の事業年度
なお、一度締結したLLP契約でも、組合員全員の同意があれば、原則事業の途中で変更することが可能です。

(5)税務会計
LLPは構成員課税ですので、当該事業にかかる税務申告は、各組合員が毎事業年度ごとに行う必要があります。
組合の事業を通じて取得した財産を、そのまま組合財産として内部に留保しておくことは可能です。
ただし、内部留保をしたとしても、組合事業から生じる損益は、すべて各組合員に帰属し、これに応じて各組合員が納税義務を負いますので、株式会社における内部留保とは性質が異なります。
つまり、内部留保した財産は、組合員が実質的に再出資したことになり、内部留保をすれば毎事業年度ごとに組合員の出資比率が変化することになります。

(6)他の組織との比較
他の事業組織との比較表はこちら

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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