商業登記・企業法務

税制適格ストックオプション

5月 1, 2010

ストックオプションは、原則として権利行使時点で(権利行使時の株価-権利行使価額)に対して給与所得として課税がなされます(給与所得は最大約50%の課税)。
納税額が多額になることのみならず、取得した株式の売却前にも関らず課税されてしまうことに留意が必要です。すなわち、手元に現金がないにもかかわらず、税金を納める必要があるということです。
税制適格のストックオプションには、優遇措置が適用され、ストックオプション付与時や行使時には課税されず、権利行使により取得した株式の売却時に行使価格と売却価額との差が譲渡所得として課税(上場株式の場合10%、2011年12月まで軽減税率の延長)されます。

【税制適格ストックオプションの要件】

1.発行内容の要件
a)新株予約権の発行価額は無償であること。
b)新株予約権の権利行使価額は、ストック・オプション付与契約時の株式時価以上であること。
c)当該新株予約権に譲渡禁止規定が付されていること。
d)新株予約権の行使期間は、付与決議日後2年を経過した日から10年経過日までであること。
e)新株予約権の権利行使による新株発行または移転が、会社法に定める手続きどおりに行なわれること。
f)権利行使により取得した株式について、発行会社と証券会社又は信託銀行との間で一定の管理信託契約を締結し、当該契約に従い一定の保管の委託又は管理等信託がされること

2.取得者の身分要件
a)付与対象者は、会社及びその子会社の取締役または使用人及び執行役(委員会設置会社の場合)である個人であること。(監査役、会計参与、会計監査人は対象外)

b)新株予約権付与決議時に大口株主に該当しないこと。
※大口株主とは、
イ)非上場株式の場合は、発行済株式の3分の1超を保有する株主
ロ)上場会社の場合は、発行済株式の10分の1超を保有する株主

c)新株予約権付与決議時に大口株主の特別利害関係者に該当しないこと。
※大口株主の特別利害関係者とは、
イ)大口株主の親族
ロ)大口株主の事実上の婚姻関係にある者及びその者の直系血族
ハ)上記ロ)の直系血族と事実上の婚姻関係にある者
ニ)大口株主からの金銭等で生計を維持している者及びその者の直系血族
ホ)大口株主の直系血族からの金銭等で生計を維持している者

d)権利承継相続人であること。
※権利承継相続人とは、新株予約権を付与された取締役または使用人たる個人が新株予約権の権利行使期間に死亡した場合、付与決議に基づき新株予約権を権利行使できる相続人をいいます。

3.権利行使要件
a)権利行使において、新株予約権を付与された者が、付与時において大口株主及び大口株主の特別利害関係者でないことの宣誓書を発行会社に提出すること。
b)権利行使者の権利行使金額の年間合計額が、1,200万円を超えないこと。
c)新株予約権者は、権利行使日に属する年の他の新予約権の有無を記載した財務省令に定める書面を発行会社に提出すること。

※上記の要件は、新株予約権等を与えられた当初の付与契約において満たされている必要があり、権利行使前に契約内容を変更して税制適格要件を満たすものにしたとしても、租税特別措置法第29条の2の規定を適用して、株式の取得による経済的利益を非課税とすることはできません。

 

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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