マンション管理に関する諸問題

民法改正とマンション管理費の時効について

6月 22, 2020

これまで、マンションの管理費・修繕積立金(以下、「管理費等」と言います。)は、民法169条に規定する「定期給付債権」にあたり、「5年」の短期消滅時効が適用されていましたが(管理組合が5年の間に裁判を起こして管理費の請求を行使しないと、5年前の管理費等から順次時効によって消滅してしまい滞納者から徴収できなくなる)、2020年4月1日施行の改正民法では、この第169条の規定は削除されました。

 

それにより、マンションの管理費等を含む「定期給付債権」については、一般の債権と同様に取り扱うことになりました。

改正民法では、マンションの管理費等を含め一般の債権の消滅時効について、「権利を行使することができることを知った時から5年」又は「権利を行使できる時から10年」と定められました(改正民法第166条第1項)。

なお、債権者たる管理組合は、当該月の管理費等を請求できることを当然に知っていますので、「権利を行使することができることを知った時から5年」という時効期間の考え方は、改正前の「権利を行使できる時」から5年という考え方と結果として同じになります。

つまり、マンションの管理費等の時効の取り扱いは、民法改正においては全く影響ないというのが結論になります。

ただし、大規模修繕工事を行う際にその不足金を補うために管理組合が徴収する「修繕(積立)一時金」「特別徴収金」「特別負担金」などの名目のものは、従来は「10年」の消滅時効の規定が適用されていましたが、これも原則通り「5年」が適用されることになりましたので、この部分においては、実務上時効期間が半分に短縮されたということが言えます。

なお、民法改正により法定利率が「年5%」から「年3%」に変更されましたので(民法第404条)、滞納額に対する遅延損害金の利率も理論上下がることになりますが、一般的には、マンション管理規約の中で遅延損害金の利率を定めていることが多いので、実務上の影響はないでしょう。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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