当事者間の話し合いで決まる協議離婚がスムーズにできればそれに越したことはありませんが、いくら協議しても離婚の合意ができないときや、相手が話し合いすら拒んでいるようなときは協議離婚は不可能です。
このような場合は家庭裁判所に調停を申し立て、調停での話し合いによって解決を図ることができます。
また、別れることは合意できていても、親権者・監護者が決まらない、養育費、財産分与、慰謝料、面接交渉などの条件で合意に至らないケースなども、家庭裁判所に調停を申し立てることで円満に離婚をすることができます。
この、家庭裁判所での話し合いの結果決まる離婚のことを調停離婚といいます。
「話し合いによる合意が成立しなければ離婚原因があっても離婚できない」という意味では協議離婚と同じですが、協議離婚と違うのは、調停委員が介入して当事者双方への説得にあたるというところです。調停はあくまで当事者の合意を前提とするので、裁判所として離婚が適切だと判断する場合でも、最終的に夫婦の合意がなければ調停による離婚は成立しません。
なお、調停を経ずに、すぐに離婚の裁判をすることはできません。
離婚は、いきなり訴訟(裁判離婚)ができないことになっており(調停前置主義)、訴訟(裁判離婚)をする前に、家庭裁判所で調停をしなければいけません。
調停を申し立てる場合には、法律的な離婚理由は必要ありません。
いわゆる有責配偶者(離婚の原因をつくった側)からも調停をすることができます。
◎調停離婚の特徴◎
① 冷静な話し合いが期待できる
当事者間の話し合いはとかく感情がぶつかりあって、双方が冷静な判断をすることがむずかしいものですが、調停では第三者の介入によって、話し合いが理性的に進められることが期待できます。
当事者が感情にまかせて攻撃的な態度を示したり、内にこもったりして調停が難しいと思われるケースでも、客観的な立場からのアドバイスにより、理性的に調停手続きが進みます。
②さまざまな問題を同時に解決できる
協議離婚では届出と同時に決めておかなければならないのは親権者だけですから、後々トラブルが生じることがあります。
これに対し、調停では離婚そのものに限らず、未成年の子供に対する親権者や監護者の決定をはじめ、養育費、慰謝料、財産分与など金銭面での取り決めに関しても同時に解決することができます。
③費用が少ない
調停の申立て手続きは比較的簡単なので、専門家に依頼せず自分自身で申し立てることもできます。
また、裁判所に納付する申立て費用も1200円程度とわずかです。これは、慰謝料や財産分与の要求額に関係なく一律です。
④プライバシーが守られる
調停の場では、家事審判官や調停委員の前で離婚に至った事情を説明しなければなりませんが、家事審判官や調停委員には、担当した事件についての秘密保持義務がありますし、調停そのものは非公開で行われますので、個人のプライバシーが外部にもれることはありません。
裁判離婚では、裁判の審理そのものが公開の場で行われますので、他人に聞かれたくないことも秘密にすることができません。
⑤離婚するかどうか迷っていても調停の申立てができる
離婚するべきか気持ちがはっきり決まらず迷っている状況でも調停を申し立てることができます。
家庭裁判所の夫婦関係に関する調停は、広く「夫婦関係調整調停」と分類されていて、離婚を求めるものだけではなく、それぞれの夫婦の悩みに合わせて裁判所が夫婦関係の仲裁をしてくれます。
離婚するかどうか迷っているような場合、「離婚の調停を申し立てると、あとはひたすら離婚というゴールに向かって話が進んでしまうのでは?」と躊躇する人もいるかもしれませんが、そういうことはありません。
はっきりと「離婚したい」と申し立てた場合でも、事情聴取や事実の調査によって円満修復の可能性があれば、離婚しないですむ方法を模索し、それに必要な助言、調整を行うこともあります。
もちろん、離婚の意思が固い人に対しては、関係修復への道を強制することはありません。離婚するのが妥当な場合は、離婚がスムーズに成立するように調停が進められます。