「受託者」とは、委託者から信託財産の移転を受け、信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分等をする者をいいます。
受託者は、信託財産の現状を維持するための保管・保存行為、賃貸等の収益を図る利用・運用行為をはじめとし、委託者の信託行為の別段の定めによっては新たな権利取得(不動産の購入等)や借入行為もすることができるとされています。
受託者の権限は前述のように幅広いものとなっておりますので、下記の重要な義務が課されます。
(1) 善管注意義務: 受託者は、信託事務を処理するにあたって善良な管理者の注意義務をもってしなければなりません。
(2) 忠実義務 :受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理をしなければなりません。
(3) 分別管理義務: :受託者は、信託財産に属する財産と受託者固有の財産とを分別に管理しなければなりません。
受託者は、信託財産の内容や受益者の状況等を総合的に判断できる能力のある者でなければなりませんので、未成年者、成年被後見人及び被保佐人は、受託者となることはできません。
民事信託の受託者は、信頼できる身近な親族であり、かつその中でも堅実な方がなるのが理想的と言えます。親族になり手がいなかったり、親族では負担が重すぎる場合には、専門職である司法書士や弁護士、税理士など委託者が信頼できる方に就任してもらうことを検討しましょう。
なお、親族を受託者に選任する場合で、その親族受託者の信託事務の忠実な遂行につき不安が残る場合には、受託者を監督かつ助力するための「受託者監督人」として専門職である弁護士や司法書士を選任することが可能です。