受託者が死亡した場合、「受託者の任務」は終了しても、「信託」は終了しません
受託者の地位は相続の対象外となりますので、その相続人は受託者の地位を承継しませんし、信託財産は、当然受託者に関する相続税の課税対象財産も入りません。
従って、相続人は、知れたる受益者に死亡の旨を通知したり、新受託者が信託事務を引継ぐまで信託財産を保管する義務を負うにとどまります(信託法第60条)。
では、受託者死亡後、その信託はどうなるのでしょうか?
信託行為(遺言又は契約)において、新受託者となるべき者(予備的受託者)の指定がなされていれば、その者が信託の引受けをし、信託任務の引き継ぎがなされるのを待ちます。
もし、信託行為に予備的受託者の定めが無い場合、あるいは予備的受託者として指定された者が信託の引受けをしない等の場合は、原則として委託者と受益者との合意により新受託者を選任できることになります(信託法第62条1項)。
なお、すでに委託者がいない場合は、受益者が単独で受託者を選任できます(信託法第62条8項)。
また、信託行為の中で、「受託者が不在となったときは受益者が受託者を指名する。」旨を規定することもできます。
必要な場合は、裁判所において新受託者を選任してもらうこともできます(信託法第62条4項)。
なお、受託者が欠けたまま新受託者が就任しない状態が1年間継続したときは、信託自体が終了します(信託法第163条3号)ので、注意が必要です。
民事信託においては、受託者が個人となるケースも多いので、死亡のような事態を想定して、次順位の受託者を予め定めておくことが必要かもしれません。
しかし、信頼できる受託者をそう簡単に複数人用意することは困難な場合も多いでしょう。
そこで、信託の永続性を考えたときには、受託者を個人ではなく「法人」とする仕組みも選択肢の一つとして充分に検討すべきです。
受託者が不在時の新受託者の選任フローチャート
1.信託行為に次順位受託者の指定や選任方法の指定がある⇒規定に従う
2.前記規定がない⇒委託者と受益者との合意により選任
(委託者がいなければ、受益者が単独で選任)