家族信託契約は、必ずしも「公正証書」にしないと駄目な訳ではありません。
信託契約自体は、公正証書にせずとも、「私文書」(公的な立場にない一般の私人が作成した書類)において、当事者(委託者及び受託者)の調印書面があれば有効となります。
また、信託契約に基づいて不動産の登記手続き(信託登記)を行う際も、公正証書で作成しなくても(私文書で信託契約を締結しても)、手続きに支障は生じません。
その一方で、信託契約書を公正証書で作成することで大きなメリットが得られるのも事実です。
下記に家族信託の契約書を公正証書で作成するメリットを2つご紹介します。
【メリット1】 後日のトラブル・紛争を防ぐ効果
私文書で信託契約書を作成した場合、後に「本人の意思で作られたのか」「契約書作成時の判断力は適切だったのか」などが疑われトラブルになるリスクがあります。
一方で、公正証書であれば、契約書作成時に公証人が面前で本人の意思確認を行うため、前述のトラブルになるリスクを軽減することができます。
また、私文書の契約書原本を紛失してしまうと、信託契約に基づく資産継承の実現ができなくなるリスクがあります。一方の公正証書の場合、原本は公証役場に保管されているため、信託契約書を紛失しても再発行してもらうことができます。
【メリット2】 金融機関で“信託口口座”が作成できる
家族信託に対応できる金融機関においては、信託契約公正証書に基づき、受託者が“信託口口座”を作成することができます。
この口座は、死亡など受託者の任務終了事由が発生したとしても、信託契約書の中であらかじめ指定された「後継受託者」がスムーズに口座を引き継げます。
もし現時点で、受託者の住所・勤務先の近くに“信託口口座”が作成できる金融機関が無くても、将来的に近くの金融機関が対応できるようになれば、以前に作成した信託契約公正証書をもとに“信託口口座”が作成できることになりますので、長期にわたり老親の多額の金銭を管理するケースにおいてはより安心感が高まります。
仲の良い円満な家族であっても、将来的に何かしらの紛争が発生しない保証はありませんので、弊所では、公正証書にしないことのリスクをお客様に充分にご説明し、出来る限り公正証書を作成することを推奨しております。