老親の財産管理・資産凍結対策などとして「家族信託」を検討する方が増えていますが、実際に長期にわたり財産の管理・処分を担う「受託者」の義務を把握しておくことは大切です。
そこで今回は、家族信託の受託者の義務を一部ピックアップしてご紹介します。

家族信託の受託者の代表的な5つの義務
善管注意義務
受託者は、信託契約に基づく信託財産の管理・運用において、他人の財産を管理する者として、自分の能力・知識に応じた適切な注意を払い、最善の方法で財産を管理する責任を負います。
これを「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」と言います。
例えば、次のようなケースでは、受託者としての管理責任が問われる可能性があります。
- 自宅が雨漏りしていることを知りながら修繕せずに放置した結果、部屋の天井や壁がシミとカビだらけになった・・・。
- 庭にある枯れた大木を放置していたら台風で木が倒れ、隣家の屋根を壊した・・・。
忠実義務
受託者は、法令及び信託目的に従い、受益者の利益のために、忠実に信託財産を管理・処分等を含む一切の信託事務を遂行する義務を負います。
これを、「忠実義務」と言います。
受託者が受益者のためというよりも受託者自身にとって利益となるようなことをすれば、それは忠実義務違反となります。
特に、受益者と受託者との間で利益が相反・競合する行為のことを「利益相反行為」と言い、利益相反行為をすることは、忠実義務違反になることに加え、信託法上、その行為は無効となります(原則として受益者の承諾を得ることが必要になります)。
分別管理義務
受託者は、受託者の固有財産と信託財産とを明確に分けて管理をする義務を負います。
これを「分別管理義務」と言います。
また、それだけではなく、信託契約が複数ある場合には、他の信託財産とも分別し、信託契約ごとにしっかりと管理することが求められます。
自己執行義務
受託者は、委託者(兼受益者)からの信頼に基づき信託財産の管理・処分を託されているため、財産管理業務を第三者に丸投げすることをせず、原則として受託者自らが信託事務を遂行すべきとされています。
これを「自己執行義務」と言います。
但し、信託契約書に第三者への委託(委任)を許容する旨の定めがある場合はもちろん、信託契約書に第三者への委託を許容する旨の定めがなくても、信託目的に照らし受益者の利益に適う事務処理をするためにやむを得ない事由があるときは、第三者への委託が認められています。
帳簿等の作成等、報告・保存の義務
受託者は、信託財産に係る帳簿その他の書類を作成し、保存する義務があります。
これを「帳簿作成・報告・保管義務」と言います。
具体的には、受託者は毎年1回一定の時期に貸借対照表、損益計算書その他の書類を作成して、その内容について受益者に対して報告しなければなりません。
また、信託に関する書類を、10年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときはその日まで)保存しなければならず、受益者の請求に応じて信託に関する書類を閲覧させなければならないとされています。
以上、今回は家族信託の受託者に関する代表的な義務をご紹介しました。
この他にも、「家族信託」については多方面の専門的な法律知識・実務的知識が必要な点が多くあります。
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