区分所有マンション(分譲マンション)を信託財産に入れた場合、滞納している管理費・修繕積立金は誰が支払うのか気になる方は多いでしょう。
そこで今回は、管理費や修繕積立金を滞納しているマンションを信託財産に入れた場合、誰が支払い義務を負うのかについて、簡単に解説します。

原則として受託者が支払い義務を負う
結論から申し上げますと、信託財産となったマンションの管理費や修繕積立金が滞納となっている場合、原則としてそれらの支払い義務は「受託者」が引き継ぐことになります。
その主要な根拠としては、信託法第21条第1項第2号となります。
信託法第21条第1項第2号により、「信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利」にかかる債務(=滞納管理費等)については、「信託財産責任負担債務」(受託者が信託財産より支払いを負う債務)となります。
また、区分所有法第8条(下記に掲載)において、管理組合等がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権(=管理費や修繕積立金など)の請求については、「債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」となっていることも、補強的な根拠となると言えるでしょう。
つまり、信託契約に基づく委託者から受託者への形式的な財産権の移転(=信託譲渡)は、売買や贈与による権利義務の承継である「特定承継」とは厳密に言うとまったく同じではありませんが、委託者の権利義務を受託者が承継するという法的性質においては、特定承継に準じた取り扱いになると考えられます。
したがいまして、新たに形式的な所有者となった「受託者」が特定承継人に準じて滞納管理費の支払い義務を負うことになるとも言えます。
もちろん、原則として受託者は信託財産たる金銭(受益者の保有資産)から支払うことになりますので、受託者の固有財産から支払う(身銭を切る)訳ではありません。
関連条文
信託法
(信託財産責任負担債務の範囲)
第21条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
一 受益債権
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
区分所有法
(先取特権)
第7条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法第319条の規定は、第一項の先取特権に準用する。
(特定承継人の責任)
第8条 前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
以上、今回は、信託財産となった区分所有マンションの滞納管理費・滞納修繕積立金について、誰が支払い義務を負うのかについて簡単に解説しました。
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