
家族信託と遺言を同時に作成することも多いですが、既に遺言書を作ってある中で家族信託を実行するケースや、家族信託を実行した後に遺言書を作り直すケースも少なくありません。
その場合、承継先の指定(遺言機能)について信託契約と遺言の内容が食い違っている(矛盾している)場合、どちらが優先的に法的効力を生じるのか重要な問題となります。
そこで今回は、家族信託の契約と遺言が併存し、その内容が矛盾する場合には、どちらが優先されるのかについて、簡潔に解説します。
遺言の後に家族信託を実行した場合の優先順位 ≪遺言⇒信託契約
家族信託の契約において、財産の承継先(後継受益者や残余財産の帰属先)について、既存の遺言内容と矛盾(抵触)する内容を定めた場合、後に作成した信託契約の条項が適用されます。
これは、複数の遺言が存在する場合、新しい遺言内容が採用される考え方と同様、最新の承継先の指定が本人(遺言者・委託者)の最終意思だとして取り扱うのと同様の考え方です。
なお、既に作成してある遺言書と信託契約に定めた承継先の指定が同じ場合において、遺言書に記載があるからといって、信託契約書に承継先の指定をしないということは絶対にしてはいけません。
一旦信託契約で管理を任せた財産(信託財産)については、法律上遺言対象財産から外れることになりますので、信託契約書の中で承継先を指定しておかないと、本人が望む資産承継が実現できなくなってしまいます。
ただ、信託契約書の中で、遺言書に記載された承継先の指定に従うように、信託契約と遺言を紐づけたい場合は、信託契約書の記載を工夫することで対応することも可能です。
この点は、かなり込み入ったお話になりますので、家族信託に精通した法律専門職に直接ご相談くださいませ。
家族信託の実行後に遺言を書き換えた場合の優先順位 ≪信託契約⇒遺言≫
例えば、高齢の父親とそれを支える子全員が揃った家族会議の中で、今後の財産管理方針だけではなく、資産の承継先まで検討し、家族皆が納得する承継先の指定まで信託契約に定めたとしましょう。
その後、5年の月日が流れた後、全財産を欲しくなった二男が悪だくみをして、5年前の家族会議による合意形成を無視して、「全財産を二男に相続させる」という内容の遺言を父親に作らせました。
この場合、信託財産を含めた全財産が本当に二男のものになるのかというと、実はそうではありません。
「全財産を二男に相続させる」と書かせた遺言の指す「全財産」は、法律上、信託財産以外の全財産を指すことになります(前述の通り、信託財産は、遺言対象財産の外側にあることになりますので)。
つまり、信託財産として預けていない父親名義の預金や自宅内の動産など、信託財産以外の財産は二男が手にすることができますが、虎の子の財産は、信託財産として預けておくことにより、二男に持って行かれることなく、信託契約書に指定された者が信託財産を承継することになります。
この信託の機能を上手に使うことにより、将来的に親の衰えに乗じて、自分に有利な遺言書を書いてもらおうとする、無用な“遺言の書換え合戦”を防ぐ効果もあると言えるでしょう。
以上、今回は、家族信託の契約と遺言が併存し、その内容が相互に抵触(矛盾)する場合に、信託契約と遺言のどちらの承継先指定が法的に有効か、について簡潔に解説しました。
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