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家族信託の“にわかコンサルタント”にご用心

9月 16, 2015

家族信託の設計に関する相談や信託契約書作成に携わる専門職が増えています。
ここで気を付けなければならないのは、『家族信託のご相談に対応できます』と謳っていながら、
実は信託法や信託の実務に精通していない専門職が多いという現実です。
“にわかコンサルタント”を見極めるポイントをいくつか紹介したいと思います。

 

1.家族信託のメリットをきちんと説明できない

・なぜ家族信託が必要なのか?
・「信託」という仕組みを使わなくても、遺言や生前贈与、成年後見制度等の組み合わせで対応できるのではないか?
・「家族信託(民事信託)」と「商事信託」のメリット・デメリットは何か?

これらについてきちんと明快に説明ができないと
そもそも家族信託を設計・実行する動機付けが揺らぎかねません。
是非とも、専門家に質問をぶつけてみてください。
明快な回答が即答できない専門職は、コンサルタントして信頼性が微妙と言えます。

 

2.現預金の実務的な取扱いについて説明できない

信託財産の中に現金を入れる場合、受託者としてどのように分別管理すべきか、
明快に説明できないのは問題です。
また、信託契約書の財産目録に親(委託者)の預貯金口座の詳細を
そのまま記載するケースを見かけますが、信託契約を交わしても
親名義の預貯金口座をそのまま受託者名義に変更して信託専用口座として
使用することは、金融実務においてできません。

実務を知らない専門職だと、金銭管理・信託口座の取り扱いについて、
明快な説明ができない可能性があります。
言うなれば、自動車を運転したことが無い教習所の教官が公道で実地訓練を教えているようなものです。

 

3.契約書の条文が極端に少ない

信託銀行や信託会社を受託者とする「商事信託」の契約書は、
条文数にして40条を超える非常にボリュームのある契約書になりますが、
家族信託の契約書の条文数はそこまで多くはないです。
それでも、通常ですと20条弱くらいが一般的であると言えます。

敢えて余分な条文をそぎ落として、シンプルにすることはありますが
最初から10条未満の条文で信託契約書ができているとすれば、
本来盛り込むべき条項が欠けている可能性がありますので、家族信託に精通した
法律専門職のリーガルチェック(セカンドオピニオン)が必要かもしれません。

 

4.契約書作成報酬が安すぎる

信託の設計は、個々のお客様の事情(保有資産、家族関係、本人及び家族の想い等)により、
十人十色です。
つまり、信託契約書の作成は、完全オーダーメイドが原則となります。
最も定型的な認知症対策の信託契約パターンでも、少なくともセミオーダー
としての要素が多分にございます。

家族信託の設計・実行にあたっては、家族会議に同席する等して、
親(委託者)側の希望・想いをお伺いすると共に、資産を継ぐ側であり、
管理を預かる側である子供(受託者)側の意見も尊重しながら、
信託の枠組みを設計していきます。
従いまして、信託契約書の作成報酬が数万円~10万円未満と見積る専門職がいた場合、
“安かろう悪かろう”の可能性があります。
法律専門職としてのコンサルティングの手間(タイムチャージ)を考えると
数万円程度で業務が成り立つことは、到底考えられないからです。

つまり、1件1件お客様に合ったオーダーメイドで作るべきところを
お客様の情報を単に信託契約書のひな型に当てはめているだけである可能性があります。
言うなれば、オーダーメイドスーツと銘打っておきながら、既製品のスーツで
間に合わせているようなイメージです。

あるいは、報酬が安い理由は、家族信託の設計に関して実務経験がなく、
自信が無いので安くしているという裏事情があるかもしれません。
信託契約書作成の実務経験についてきちんと尋ねてみて、正直に『経験が無い』
という専門職であれば、誠実さはありますので、あとは前述のように家族信託に精通した
法律専門職のリーガルチェック(セカンドオピニオン)を求めるべきかどうか
検討すべきです。

 

5.受託者主導で暦年贈与が実行できると安易に説明している

信託の仕組みの中で、親が判断応力低下後も親(委託者)が持っている資産を
暦年贈与を実行できると安易に説明している専門職がいたら、要注意です。

受託者は、受益者のために財産を管理する立場の者ですので、
受益者である親に代わって、受託者が直接贈与に関与することは、
受託者としての“善管注意義務違反”・“忠実義務”に
違反することになりかねません。

確かに信託の仕組みの中で、親が判断能力低下後も“みなし贈与”として、
実質的には暦年贈与を実行できる仕組みは設計できます。
しかし、本来は、ハイレベルな信託設計をしていく中で実行できる仕組みであって
安易にこの仕組みを導入すべきでは無いと考えています。

信託スキームの中で安易に贈与を実行することは、後々に税務署から
様々な問題点を指摘されるリスクがありますので、ご注意ください。

 

6.信託の関係者に家族を多く配置している

受託者から財産管理に関する定期的な報告を受ける立場の「信託監督人」や
受益者に代わって権利行使をする立場の「受益者代理人」に、
他の家族(例えば受託者の兄弟)が就任する提案は
慎重に考える必要があります。

家族間で確執が生じた場合、信託の運営自体に影響を及ぼすリスクのある
設計は避けた方がいいでしょう。
信託監督人や受益者代理人は、感情的な言動をとらない
客観的な第三者を置くべきです。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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