2/17の日本経済新聞朝刊によると、法務省は、離婚後に父母の双方に親権が残る「共同親権」制度導入の本格的な検討に入ったとのこと。
現在の民法は、父母のいずれか一方しか離婚後の親権を持つことができない、いわゆる「単独親権」の制度を採用しているが、「共同親権」の制度を導入することにより、欧米諸国の多くで採用している「単独親権」「共同親権」の選択ができるようにする意向だ。
日本は、先進国でも例外的に「単独親権」を採用しており、民法が規定する現行制度では、親権を持たない親は、 子どもと会うこと(いわゆる「面会交流」。以前は「面接交渉」と呼んでいた)が大きく制限されている。
ただ、近年の離婚の増加に伴い、親権をめぐる争いも増加しており、子どもを勝手に連れ去ったり、虚偽のドメスティックバイオレンス(DV)をでっち上げて離婚相手から親権を守ろうとする事例が頻発し問題となっているようだ。
法務省は、こうした問題を踏まえ、別居する親と子どもとの面会交流を積極的に実現し、両方の親が子育てに関わりやすくする環境を整えることで、親子間の完全な断絶を防ぎ、子どもの利益を確保するのが狙いと言える。
日本では、養育費や面会交流の方法などをきちんと取り決めしなくても、夫婦間の離婚意思の合致だけで離婚することができるため、「子どもの福祉に反する」との意見があるようだ。
一方、欧米における親権の概念は、「子どもを監護・養育する義務」と捉えており、両親が親権を持つのは当然との考え方が主流であり、離婚後も一方の親が面会交流や養育費の支払いを拒むと違法行為に問われるらしい。
法務省としては、離婚後も父母の双方が子どもの監護・教育の責任を追うべきだとの欧米諸国の価値観を取り入れ、「共同親権」を選択肢に入れることで 「子の利益」を重視したい考えだ。
しかし、「共同親権」が子どもの福祉にとって必ずしも良いとも限らない。
父母の関係が良好でない場合、親権の行使をめぐって双方が激しく対立し、子どもの利益を害することもある。
また、配偶者からの暴力から逃げるため「一刻も早く離婚したい」という深刻なケースもあり、 両親の間を行き来することで、子供が逆に精神的に不安定になるケースもある。
欧米では親権選択にあたり、裁判所などを介して子どもの養育環境を熟慮して決定する場合が多いとのことで、 日本で「共同親権」を導入した場合でも、養育環境を慎重に考慮し、ケースによっては「単独親権」を選択することもできるように検討する。
法務省によると、日本では協議離婚が中心で、親権の決定に家庭裁判所が関与していないケースが大半であるところ、 選択的な「共同親権」を導入するには、親権の決定に制度として家庭裁判所がどう関与するかが大きなポイントだ。
幼い子どもに対する育児放棄、虐待のニュースが後を絶たない昨今、家庭裁判所等の第三者がどう父母の間に入り、本当の意味の「子の利益」の実現をするか、 深く大きな課題である。