2020年9月4日付日本経済新聞朝刊によると、東京地裁は、9/3、中古賃貸マンションの売買時の消費税の税務処理が争われた裁判で、不動産会社 エー・ディー・ワークス(以下、「AD社」という。)に対する東京国税局の課税処分を取り消す国税局側敗訴の判決を言い渡した。
AD社は、中古の賃貸マンションを購入した後、大規模修繕などで価値を高め、収益が見込める投資用不動産として販売する事業を行っていたが、中古マンションの売買時にかかる消費税の税務処理をめぐって、約5億3千万円の課税処分を受け、取り消しを求めていた。
消費税には、販売時に受け取った税から、仕入れ時に支払った税を差し引いて申告・納税する「仕入れ税額控除」の制度がある。
その際に控除できる金額の計算には詳細なルールがあるが、今回は中古マンションの仕入れの目的が、「投資家への販売」なのか、「家賃収入を得る目的」もあったのかが最大の争点となった。
AD社は、販売目的の仕入れであり、仕入れ時の消費税を全額差し引くことができると主張したが、東京国税局は、販売までの期間にマンション居住者から家賃を受け取っていると指摘し、「家賃収入も事業の目的の一つで、全額を差し引く処理はできない」として同社に申告漏れを指摘した。
判決では、「仕入れの目的が不動産の売却にあることは明らか。賃料収入は不可避的に生じる副産物として位置づけられる」と指摘し、賃料収入が見込まれるからといって全額を差し引けないとする国税の判断は「相当性を欠く」と結論づけた。
東京国税局側は、「国側の主張が認められなかったことは大変、残念。控訴するかどうか関係機関と判決文を検討中」としているが、同様の課税処分は全国で行われており、判決が確定すれば、不服の申し立てなどが相次ぐ可能性もあるという。
中古マンション市場を巡っては、コロナ禍を踏まえ、今後さらに価格が上昇するのか、横ばいか、近いうちに1~2割下落するのか、様々な予測がされているようであり、様々な観点から注目が必要である。