2021年3月18日付日本経済新聞及び読売新聞によると、3月17日、札幌地裁において、同性婚を認めないのは憲法違反だとして、北海道内の同性カップル3組が国に提訴した訴訟の判決が出た。
その中で地裁は、同性婚を認めていない民法などの規定が法の下の平等を定めた憲法に違反する、として初めて「違憲」と判断した。
判決理由で裁判長は、「現在は、同性愛が精神疾患ではないとの知見が確立され」ており、性的指向は「自らの意思にかかわらず決まる個人の性質で、性別、人種などと同様のもの」と指摘。
また、配偶者の相続権や子供に対する共同親権など、「婚姻によって生じる法的利益は、(性的指向に関係なく)等しく享有しえるものと解される」ものであり、異性間の婚姻であれば得ることができる法的効果について、「同性愛者がその一部ですら享受できないのは、合理的根拠を欠き、差別に当たる」と指摘。「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると結論付けた。
一方、原告の同性カップル3組が求めた国に対する計600万円の賠償請求は退けた。判決は、同性婚への肯定的な意見が日本で広がったのは比較的近年だったことなどから、「(違憲状態だったと)国会が直ちに認識するのは容易ではなかった」と結論づけた。
海外においては、同性婚を認める動きが広まっており、2020年5月時点でオランダ、米国、英国、ドイツ、台湾など29の国・地域で同性婚が法的に認められているそうだ。
判決はこうした海外の動向にも触れて、同性婚を認める動きを「G7参加国など先進国に多くみられる」と言及。
国ごとの文化や価値観の違いを踏まえても「(同性婚の法的取り扱いを検討する上で)考慮すべき事情である」と述べた。
日本国内における動向は、同性カップルを行政が公に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が増えている。
夫婦と同様の関係であることを認める証明書を発行し、パートナーが病気で手術を受ける際の同意などを可能にする制度だ。
2015年に東京の渋谷区や世田谷区で始まり、現在は札幌市や大阪市など78自治体が導入しているという。
法律婚ができない同性カップルを巡っては、下記のような不利益があると指摘されている。
・パートナーの法定相続人になれず資産承継が円滑ではない
・遺族年金が受給できない
・緊急手術の際の手術同意書に署名ができない
・職場での福利厚生を受けられない
若い世代では、同性婚を肯定的にとらえる人が多いという国内の調査結果があるそうで、企業においても、同性カップルに対し異性間の夫婦と同様の福利厚生やサービスを提供するところも出てきたようだ。
今回の判決は、地裁レベルとはいえ、同性カップルに婚姻の法的保護が与えられない現状を「差別に当たり違憲」と明示しており、同性婚のあり方・法的保護を巡る議論に一石を投じる大きな一歩となりそうだ。
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