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高齢の飼い主には「ペット信託」という選択肢

9月 21, 2021

2021年9月8日(水)読売新聞朝刊の「安心の設計 MONEY」という記事に一人暮らしの高齢者のペットの問題が特集されていました。

 

どのような問題かというと、ペットを遺して高齢の飼い主が先に亡くなってしまったとき、そのペットを誰がどのように面倒をみるかという深刻な問題です。
実際には、飼い主が亡くならなくても、自宅に独居暮しができないような身体的能力・判断能力等の衰えにより、入院・入所せざるを得なくなれば、そのペットを誰が世話するのかという問題は顕在化します。

数としては少ないですが、ペット可の高齢者施設もありますので、その方のニーズに合った施設を見付けることができれば、とりあえずの安心は得らえます。
しかし、ニーズ・条件に合うペット可の施設が見付からないケース、入院せざるを得ないケースでは、家族・親族・親友に頼むことが現実的な選択肢となるでしょう。

 

冒頭の新聞記事によりますと、犬の飼育にかかる年間費用は約34万円、大型犬だと約48万円、猫は約16万円だそうです。
平均寿命は、犬が14歳、猫が15歳前後だとすると、高齢の飼い主の死後、数年でも生きてくれれば、飼育費用に金100万円以上の費用がかかることも十分あり得ます。

自分が元気なうちに新しい飼い主を探してペットを譲渡することも有力な選択肢にはなりますが、飼い主の心情を考えると、そう簡単に割り切ることも難しいかもしれません。

 

そこで、自分が飼えるギリギリまで自分でお世話をし、もし飼えなくなったら、自分の財産からペットの飼育費用を捻出し、健康状態の悪化や相続発生があっても、ペットが平穏無事に暮らせるような仕組みを作っておきたいと考える方は、少なくないです。

その手段として、注目を集めているのが「ペット信託」という仕組みです。
「ペット信託」といっても、全国一律の利用できるサービスがある訳でもなく、まして信託銀行や信託会社が用意している定型的な金融サービスでもありません。

ペット信託は「民事信託」の一つの形態で、信託銀行や信託会社のようなプロ(金融庁の免許を持った会社)に金銭を預けるのではなく、飼育費用分の金銭管理を託す相手は、親族や親友、実際に世話を担う方などその設計は、定型のものはありません。

飼い主が懇意にしているペットシッターやペットショップ、獣医(動物病院)などがいるかどうかで、その設計の難易度も変わります。

 

そこで、司法書士や弁護士、行政書士等の法律専門職のサポートを得ながら、飼い主を取り巻く環境や関与可能な関係者に応じて、その設計を行う難しさがあります。
設計が固まりましたら、その設計に従い、信託契約でペット信託の仕組みを構築しますが、将来、いつその飼い主が飼えない状態になるか分かりません。
そんな中で、もし実際に飼えなくなる時が来たら確実のその信託内容が実行されるかを定期的にチェックする仕組みも考えなければならず、普通の法律専門職では設計や実行性のチェックを担うことは難しいと言えます。

もちろん、ペット信託の仕組みを導入するためのコストもかかりますので、高齢の方がペットを飼う際には、将来のサポート体制も踏まえ、十分な備えをしておくことが必要でしょう。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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