先日の日経新聞の夕刊記事に『士業の値段』として、
相続にかかわる士業のサービスの費用の目安が
掲載されていた。
かなりザックリな記事で、ちょっとビックリし、ちょっと腹が立った。
記事についている表には、税理士さんの相続税の申告報酬についてだけ
遺産総額に応じた報酬の目安が書いてある。
一方、≪遺言執行≫に関する業務の費用については、
遺産総額による区別もなくザックリと
『行政書士は〇〇万円、弁護士は××万円前後』
と書かれている。
そんな訳あるかいっ。
通常は、遺産総額に応じて遺言執行報酬は変動するもの。
税理士さんの報酬だけ、段階的に記載しておきながら、
行政書士・弁護士の報酬は、平均値ってどうなの(怒)。
しかも、なんで遺言執行の大きな担い手である司法書士の
報酬が無いんじゃいっ(激怒)。
また、≪不動産の所有権移転登記≫に関する業務の費用については、
『司法書士〇〇円』とこれまた定額であるかのような誤解を招く表示。
不動産の登記手続き報酬も不動産の評価額や物件の数により変動する。
普通なら、『〇〇万円から』とか『〇〇万円から××万円前後』
とか書くべきでは・・・。
あるいは、士業の報酬目安を一覧表にする前提として
『遺産総額〇〇円とした場合』という設定にすべきだろう。
なんとも大雑把な記事と言える。
あと、記事本文中の遺言執行に関する件(くだり)には、
『士業の事務所は信託銀行に比べて専門性が高くないことが多いが・・・』
との記載。
そんな訳あるかいっ(本日2回目)。
どのレベルの士業を想定しているのか分からないが、
確かに「相続専門」を謳っている士業にも疑わしい者もいるし、
弁護士でもスキル的・人格的に怪しい人がいるのは事実。
だが、信託銀行に比べて専門性が高くないことが多いのではなく、
『士業の中でも、専門性のレベルに大きな差がある』という表現に
していただきたい。
税務面を除く相続手続き(遺言執行や遺産分割)には、
被相続人の少なくとも出生まで遡った戸籍を読みほどき、
相続関係を確認する作業があるし、代償分割・換価分割等の
方法論の使い分けもある。
遺産に不動産が含まれれば、不動産登記手続きの知識が必要だし、
預貯金・有価証券等の金融資産の相続手続きには、法律論ではない
金融機関の実務の取り扱いに精通する必要がある。
遺留分に基づく取り分の算出が必要なケースもあるし、
相続放棄すべきとの判断を求められることもある。
円満な遺産分割協議の成立に向けたアプローチの工夫や
相続人が多数いる場合の協議取りまとめのテクニックもある。
そんな論点満載の相続手続きにおいて、
士業が『信託銀行に比べて専門性が高くないことが多い』ということは、
本来ない。
というか、あっちゃいけない。
どんな業界でもいえることだが、全体のレベルアップをすることって重要。
士業は、その最前線で、常に最先端の法律・判例・コンサルティング手法を
身につけるたゆまぬ努力が求められる、と怒りを収めて自戒に至る。
士業の値段
12月 21, 2013