商業登記・企業法務

会社法施行における監査役の任期の問題 1

2月 20, 2007

平成18年5月1日の会社法施行に伴い、旧商法・株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「旧商法特例法」という)等の規定に基づき適法な任期中であった監査役が自動的に退任してしまうという問題がある。
特に、多くの中小企業にとって影響しかねない小会社(※)に関する事案について2回に分けて説明する。
会社法施行時点で株式譲渡制限の無い小会社
旧商法下における小会社の監査役は、会計監査権しかもっていなかった(旧商法特例法22条)。
しかし、施行後においては、定款に規定しなければ監査役の権限を会計監査権のみに限定することができなくなった。そのため会社法移行への経過措置として、会社法施行時に小会社であった株式会社の定款には監査役の権限を会計監査に限定するとする規定があるものとみなされた(整備法53条)。
ところが、上記経過措置に関わらず、施行時に株式の譲渡制限が無い株式会社(会社法上の「公開会社」)の監査役は、会計監査に限ることはできず、業務監査権まで自動的に付与される(会社法389条1項)。
つまり公開会社である小会社の場合、会社法施行日において、“権限が会計に関するもののみから業務監査にまで拡大する場合には、監査役の任期は満了する”という会社法336条4項3号が適用されるため、現任の監査役の任期は、施行時に任期満了退任することになる。
会社法のもとでは、公開会社の監査役の権限を会計監査権に限る旨の定款規定をおくことができないため、既存の公開会社である小会社の監査役が、施行日に任期満了退任することを避けるためには、施行日前の株主総会において株式の譲渡制限に関する規定を設定する旨の定款変更決議(非公開会社化)を行っておく必要がある。
このような非公開会社化を行わなかった会社において、施行日に監査役の任期が満了し、監査役が欠けることとなると、従前の監査役が権利義務監査役として監査役業務を継続することになる(会社法346条1項)。
この場合の権利義務監査役は、会計監査権のみならず業務監査権までも与えられると考えられる。
また、施行時に監査役が欠けることを避けるために、施行日前の株主総会において、施行日後に就任すべき業務監査権をも持つ監査役をあらかじめ選任しておくことも可能である。もちろん、現任監査役をそのまま施行日後の監査役として選任しておくことも可能である。
【ポイント整理】
会社法施行時点で公開会社である小会社
⇒公開会社ゆえ監査役の権限を会計監査に限ること不可
(整備法53条の定款のみなし規定の適用も当然なし)
⇒施行時点で監査役に業務監査権が拡大
⇒会社法336条4項3号の適用により監査役が任期満了退任
※ 資本金1億円以下の株式会社(負債額200億円以上を除く)

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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