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家族信託終了時の実務

宮田総合法務事務所 代表司法書士 宮田浩志 宮田総合法務事務所 代表司法書士
宮田浩志
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家族信託の終了に伴う実務については、新聞・雑誌・テレビ等で取り上げられると共に、士業等の専門職側も家族信託の設計・実行に積極的に関わることが増えてきたのが、ここ数年であるというのが実状ですので、まだまだ老親の死亡等で信託契約が終了するケースは、それほど多くないと思われます。筆者のお客様でも、信託契約が終了したケースは全体の1割にも満たないくらいでしょうか。

これから徐々に信託契約が終了するケースが増えてくると思われますので、既に組成をしている家族信託の案件においては、今一度、信託が終了した後に想定される諸手続きやリスクについて検証して頂きたいです。また、これから家族信託の設計・実行する案件では、家族会議において家族信託の設計を検討する段階で、信託終了時を見据えた設計を忘れずに行って頂きたいと考えます。

「信託終了」といっても、その終了事由・タイミングが設計によって異なりますので、ここでは、最も典型的と考えられます「受益者(老親)の死亡」を原因とする信託終了を前提にお話したいと思います。

それでは、信託終了を迎えたお客様がいた場合に、我々専門職としてはどのような対応をすべきでしょうか。

 

①信託財産の状況を把握

まずは、信託の残余財産の状況がどうなっているのかを受託者(又は家族全員)と専門職の間で情報共有するところから始めます。契約当初、信託財産に自宅不動産や収益物件を入れていたが、信託終了時には既に売却処分されているケースも少なくないことから、信託財産として不動産や金融資産がどのくらい残っているかを確認しましょう。案件によっては、信託不動産に担保が設定されているかもしれません。積極財産だけではなく、信託財産に付けられた担保にかかる借入残高を含め、信託財産の最新の状況を取りまとめ、信託終了時の残余財産目録の作成をしましょう

その上で、信託契約書において残余財産の帰属先の指定がどのように規定されているか、それが現在における家族(法定相続人)のニーズに合っているかを確認する必要があります。

 

②信託財産以外の財産状況を把握

次に被相続人(受益者)の信託財産以外の保有資産及びそれらに関する遺言や死因贈与契約(以下、「遺言等」と言います。)の有無についての調査・把握が必要になります。

この調査の主たる目的は二つです。

一つは、信託財産と所有権財産を合算した積極財産から故人の債務や未払いの入院費等の精算費用、葬儀費用などを控除した正味の相続財産の概算総額がどのくらいになるのかを把握することです。それに基づき、相続税の申告と納税が必要かどうかについて早めに認識しておくことはとても大切です。

もう一つの目的は、法定相続人全員を交えた話し合いが必要かどうかを見極めることです。家族関係が微妙・疎遠な場合はもちろんのこと、円満な関係であってもお互いに遠く離れた居住するなどスムーズな話合いができるとは限りません。信託財産以外の財産(所有権財産)については、遺言等による承継者の指定がなされているかどうかを確認することが重要です。

遺言等があり、その遺言等の内容で信託財産以外の財産をすべて網羅できていれば、信託契約と遺言で財産承継の道筋はできていますので、それらに基づいて清算受託者と遺言執行者が粛々と手続きをすればよいことになります。

一方、もし遺言等がなければ、信託財産以外の財産については、改めて法定相続人全員による遺産分割協議をしなければ遺産の承継・分配の手続きが進まなくなってしまいます。

このように法定相続人間で遺産分割協議をすべき遺産がある場合はもちろんのこと、次のような2つのケースでも、法定相続人全員を交えた話合いや協力が必要になりますので注意しましょう。例えば、信託財産について、信託契約書の中で残余財産の帰属先については特定の者を指定せずに、敢えて「法定相続人による協議により定める」とするケースです。また、信託財産に関する債務が残っている場合(信託不動産に絡むアパートローンの残高があるようなケース)は、当該担保付不動産を引き継ぐ者が当該債務を引き受ける旨の免責的債務引受契約を、債権者たる金融機関及び法定相続人並びに受託者との間で調印することになります。

これらのようなケースでも、しかるべきタイミングで我々専門職が関与しながら法定相続人全員を交えた話合い・手続きを進める必要があるでしょう。

なお、前述の通り、信託契約書に記載された残余財産の帰属先指定自体が、現時点での家族のニーズに合っていなければ、指定された者(残余財産の帰属権利者)が信託法第183条第3項に基づきその権利を放棄した上で、同第182条2項に基づき改めて法定相続人全員による話合いの中で残余財産の帰属先を決めることも可能となります(この話合いが民法における「遺産分割協議」なのかどうかという議論があるかもしれません。ただ、当然に遡及効のある「遺産分割協議」ではないとしても、法定相続人の中の特定の者が残余財産を引き継ぎ、それ以外の法定相続人は権利を放棄する旨の合意がなされれば、同第183条第4項により権利放棄した法定相続人は当初から残余財産を受け取る権利を取得していなかったことになりますので、結果として遺産分割協議と同様の遡及効があることになります)。

以上のように、改めて法定相続人による話合い・合意形成が必要かどうかを早い段階で見極めておけると安心です。

 

③清算受託者と専門職の役割分担と御見積

上記①と②の把握を経て、今後誰がどのように手続きをしていくかのご案内が可能になります。

例えば、信託財産の清算手続きについては、信託契約書に指定された「清算受託者」が手続きを遂行することになります。信託金融資産であれば、清算受託者が銀行や証券会社における手続きを行うことになります。信託不動産があれば、それは、清算受託者と残余財産の帰属権利者から委任を受けた司法書士が信託終了にともなう登記手続きを行うことになるでしょう。

なお、先に述べました信託財産に債務が残っている場合では、清算受託者が当該債務を全額返済するか、あるいは前述の免責的債務引受契約を締結しない限りは、清算受託者は帰属権利者に残余財産を引き渡すこと(不動産であれば、信託終了に伴う帰属権利者への名義変更)はできませんのでご注意ください(信託法第181条)。

一方、信託財産以外の財産については、遺言があれば、「遺言執行者」が相続に関する手続きを遂行することになります。もし遺言書の中に遺言執行者の指定がなされていなければ、状況に応じて家庭裁判所に「遺言執行者の選任審判」の申立てをする必要があります。

前述の通り、法定相続人全員の参加による話合い・合意形成が必要な場合は、第三者の立場である専門職の立会いの下で進めることも良策となるでしょう。

以上を踏まえて、関与する専門職の業務内容に応じた報酬及び実費の概算御見積やスケジュールイメージをご案内することになります。

なお、司法書士以外にも、信託終了(相続発生)に伴う諸手続きに関与が想定される専門職がいますので、下記に簡単にご紹介します。

 

◆税理士:信託に関する受益者別調書・調書合計表の税務署への提出、準確定申告・相続税申告に関する相談・手続き、2次相続へ向けた税対策のご提案

◆弁護士・行政書士・司法書士:遺産整理・遺言執行に関する業務、遺産分割・遺留分などに関する法的アドバイス・合意書面の作成・調印サポート

◆司法書士:不動産に関し、所有権移転及び信託登記抹消や抵当権の債務者変更・抹消などの登記手続き

◆不動産業者:清算受託者・帰属権利者による不動産売却手続きの仲介、賃借人への振込先変更通知など賃貸経営に絡む業務、帰属権利者への不動産活用のご提案

◆FP・保険代理店:残余財産受取後の資産運用のご提案、子世代に対する保険・保障のご提案

 

家族信託の検討・設計の段階から親世代・子世代を交えた「家族会議」において全員の理解・納得のもと手続きを進めること、さらには、信託契約締結後も引き続き定期的に「家族会議」を開催して老親のサポート体制の見直し、受託者による財産管理状況の確認をすることが家族信託の理想的な形態といえます。老親の相続が迫ってから、あるいは老親の相続が発生してから、家族がバタバタ・ギクシャクしないように、日頃から円満円滑な財産管理が遂行できているかを我々家族信託に精通した専門職が関わり続けることが求められています。

 

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