相続登記・不動産登記(売買、贈与、抵当権設定・抹消など)

私道部分の相続登記が漏れていたときの対応策

親に相続が発生した後、被相続人所有の自宅建物やその底地の相続登記を済ませた方でも、「私道部分」(家の建つ土地に隣接した土地で、道路として利用されている私有地)について、相続登記ができていない方が少なくありません。

私道部分は、近隣の方と共有で持ち合っているケースも多いですし、固定資産税も課税されていない場合も多いので(※)、故人が私道を所有していたことを家族も認識していないケースがあります。
つまり、遺言書の中に記載がされていないことや、遺産分割協議の対象から漏れていることも少なくありません。

相続税の申告を税理士さんに依頼した場合でも、固定資産税課税明細書や名寄帳にも記載されない土地であれば、相続税の計算上にも影響がないので、別途調査しない限り発覚しないこともあります。

そういうケースでは、家を建替えたり不動産を売却する段になって初めて発覚して困窮する事態やそれが原因で近隣とトラブルに発展してしまう事態も起こり得ます。

(※)「私道」については、個人所有が所有する土地でありながら、不特定多数の方が通行する「公衆用道路」としての利用実態について各自治体が認めれば、固定資産税・都市計画税・不動産取得税が非課税になります。
「公衆用道路」とは、一般公衆の交通のために利用されている道路ということです。公衆用道路であるかどうかは、固定資産税課税明細書の現況課税地目が『公衆用道路』となっているかどうかで分かります。

 

【私道部分の相続登記が漏れていることで考えられるリスク】

(1) 私道部分と本地(売買対象のメインの土地)を一括して売却しなければならず、私道部分の相続登記が完了するまで売却手続きが延期となるリスク。
(2) 売却予定が無いからという理由で放置しておく場合、相続発生時から年月が経過すると、利害関係人が増えて相続登記をするのがより困難になるリスク。またそれに伴い相続登記のコストも増大するリスク。

上記(2)については、たとえば、80代の独身男性Aさんが亡くなった場合、相続人は、Aさんの兄弟姉妹や兄弟姉妹が亡くなっているときはその子(甥姪)となります。その後さらにAさんの弟Bさんが亡くなると、相続登記が漏れた土地を相続する権利(Aさんの相続権)は、新たに亡くなったBさんの配偶者や子(Aさんからみた甥・姪)がその権利を引き継ぐことになります。
つまり、年月が経てば経つほど更なる相続が発生し利害関係者が増えるリスクがあります。

 

【私道部分の相続登記が漏れていたときの対応策】

私道部分の相続登記が漏れていた場合、改めて戸籍謄本等の必要書類一式を揃え直して相続登記をする必要があります。
この際、当時の戸籍謄本などの相続関係書類一式の原本が残っていれば、関係書類の有効期限は一切無いので、そのまま使えることになります。
問題は、当時本地の相続登記に何(遺言書? 遺産分割協議書?)を使用したか、今回もその書類が使用できるかどうかです。

(1) 遺言書の原本がある場合
遺言がある場合は、漏れた私道部分の相続登記が可能な記載内容になっているかを確認します。
当時の遺言書で対応できそうであれば、遺言書の原本を確保する必要があります(公正証書遺言で作成されていれば、原本が見付からなくても、公証役場で遺言公正証書の再発行が可能なので安心です。)。
もし、既存の遺言内容で対応できない場合、あるいは対応可能な遺言内容になっていても手書きの遺言書(自筆証書遺言)の原本が見付からない場合は、下記の(3)で対応せざるを得なくなります。

(2)遺産分割協議がある場合
当時の遺産分割協議書が残っている場合は、その遺産分割協議書の記載内容で私道部分の相続登記が可能かどうかを確認します。
当時の遺産分割協議書で対応できそうであれば、その原本を確保する必要があります(当時の印鑑証明書の原本があれば、発行年月日は古くても有効に使用できます。)。
もし、当時の遺産分割協議書の原本が見付からない場合は、下記の(3)で対応せざるを得なくなります。

(3)これから新たに遺産分割協議書を作成し直す場合
現時点で相続権がある親族全員で改めて遺産分割協議をする必要があります。地方や海外の居住がいると、連絡及び書類のやり取りにそれなりの手間と時間がかかります。
また、親族の居場所が分からなくなっていれば、所在(住所)調査から始めなければなりません(これらの作業は、弊所の「遺産整理業務」の中でも対応しているので、負担感を感じる方は、弊所ですべてまとめてお手伝いが可能となります。)。
なお、相続権のある親族の中に認知症や大病で判断能力が著しく低下している親族や障害により物事の理解力が乏しい親族がいる場合は、法的に有効な遺産分割協議ができない可能性がありますので、その場合は、その親族に成年後見人を就けるなどさらなる手間と時間とコストがかかる可能性があります。
もちろん、相続権のある親族の中に非協力的な親族がいる場合も厄介です。財産的な価値のない私道部分についての遺産分割協議に“はんこ代”として幾ばくかのお金を払わざるを得ないケースもあります。
だからと言って、この交渉を弁護士に依頼すれば、スムーズにうまくいくとも限らないのがこの業務の難しいところです。

 

以上のように、私道部分の相続登記が漏れていると、後々手間と時間とコストがより増大する作業になりかねません。
まずは相続登記の漏れがないように司法書士などの法律専門職に相談をしながら相続登記の手続きを進めるべきと言えます。
それでも私道部分の登記手続きが漏れていて、事後的に対処しなければならないと分かった際には、なるべく速やかに初動を起こし、相続登記の完遂に向けた上記(1)から(3)のプロセスを踏んでいただきたいと思います。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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