マンション管理に関する諸問題

マンションの滞納管理費を回収するための3つのポイント

11月 29, 2022

弊所には、マンションの管理組合やマンション管理会社から持ち込まれる滞納管理費の回収についての相談は少なくありません。実際に弊所で法的措置を講じて、和解や判決をもって回収を実現するケースも多いです。

そんな経験を踏まえまして、本稿では、管理費・修繕積立金(以下、「管理費等」と言います。)を滞納している区分所有者に対し、効果的に督促し、確実に回収するために重要となるポイントについて紹介します。

 

(1)滞納者には、即座に対応し断固たる姿勢を見せる

管理組合やマンション管理会社としては、管理費等の滞納者がいる場合、その区分所有者にこまめに連絡・催促をして、滞納状態が早期に解消される努力をすることが大切です。

通常、管理費等は、各区分所有者の口座から毎月引落になっているものですので、口座引落がされない状態というのは、たとえ1ヶ月分であっても異常事態と考えるべきです。

滞納の原因は、管理費等の引落口座の残高が少ないことに区分所有者自身が気付いていないだけかもしれませんし、反対に区分所有者が意図的にその口座残高をカラにしている悪質なケースもあり得ます。あるいは、区分所有者に相続が発生し、引落口座が口座凍結や口座解約されている可能性もあります。

管理会社又は管理組合は、滞納が生じたタイミングで、区分所有者に一報を入れ、現状を確認することをお勧めします。
その努力にもかかわらず、滞納状態が解消されず、滞納額が数か月分以上に大きくなってしまったら、内容証明郵便を発送して、滞納状態を放置しないという管理会社・管理組合としての断固たる姿勢を見せるべきです。

それでも状況が改善されない場合は、後記(3)記載のタイミングを参考に、法的手段を迷わずに講じることが重要です。

 

(2)法的措置に関する費用も滞納者に請求できるように管理規約を整備する

管理会社又は管理組合が滞納者に対して督促や法的手段を取る場合の費用(内容証明郵便代や司法書士・弁護士に対して訴訟委任をした場合の専門職報酬、訴訟等に係る印紙代等の実費)については、当然に滞納者に請求できるようにマンション管理規約の中でその旨を規定をしておくことが重要です。

まずは、現在の管理規約がどうなっているかを確認するところから始めましょう。

もし現規約にその条項が無ければ、速やかに管理組合総会において規約の変更決議を行うことも視野に入れるべきでしょう。

また、併せて管理規約の中で、遅延損害金の利率(例えば「年14%」など)を定めておくことも得策となります。

こうすることで、管理組合側に滞納に関する費用負担が発生することが防げますので、滞納者に対して躊躇なく督促や法的措置に踏み込むことができて安心です。

 

(3)時効になる前に法的措置を実行する

マンションの管理費等は、「5年」の消滅時効があります(民法第166条第1項)。
つまり、滞納者からみると、5年間管理費等を一切支払わずかつ法的措置も受けなければ、支払う義務が消滅することになります。

管理費等は、各区分所有者が毎月の支払う義務を負っているものなので、その支払い期限から5年を経過した月ごとに順次支払い義務が消滅していくことになり、すぐに滞納額の合計が回収不能となる訳ではありません。

しかし、滞納状態を長期間放置し消滅時効が成立してしまいますと、マンションの維持・管理・大規模修繕等のために区分所有者全員でプールしておくべき資金が不足して、マンション管理が行き届かなくなり、最終的にはそのマンションの価値が下落するという事態に陥りかねません。

そこで、管理費等が消滅時効が成立して回収不能とならないように、最初の滞納から3~4年前後継続して滞納している区分所有者がいれば、裁判所に申立てをして、「支払督促」「少額訴訟」「通常訴訟」などの法的措置を講じ、「時効の更新」(改正前の民法でいうところの「時効の中断」)をさせることが重要です。「時効の更新」とは、消滅時効5年の期間計算がリセットされ、またゼロから期間計算をスタートすることを意味しますので、まずは消滅時効の成立により滞納管理費が回収不能となることを回避できます。その上で、裁判所の手続きにおいて滞納者に対して一括又は分割での支払いを求めることになります。

滞納者が裁判期日への出廷に応じず答弁書を提出しない(反論等をしない)場合は、擬制自白とみなされ、ほぼ自動的に管理組合側の勝訴となるでしょう。滞納者が裁判期日に出廷して、話し合いを希望した場合は、月々の分割払いの合意で和解終結することも少なくありません。

なお、判決又は裁判上の和解により確定した債権については、判決又は和解の時から「10年」の時効期間とされています(民法第169条)ので、次の消滅時効にかかるリスクはかなり軽減されると言えます。

また、判決又は裁判上の和解により確定した債権については、当該滞納者が区分所有マンションを売却する際には、売買仲介時における宅建業者の重要事項説明事項にあたり、通常は売却時に滞納額の精算・完済が行われますので、売買時点で滞納が解消されることになります。

もちろん、理論上は、判決又は裁判上の和解に基づき、強制執行(当該滞納者が保有する区分所有マンションを競売にかけること)をすることもできますので、判決又は裁判上の和解をしておくことで、回収不能となる可能性を限りなく抑えることができると言えるでしょう。

 

★参考記事:『民法改正とマンション管理費の時効について

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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