売買による所有権移転仮登記に関し本登記請求権の消滅時効成立の可否
「所有権に基づく物件的請求権」とは、不動産を購入した買主が売主に対し不動産の引渡請求や所有権移転登記請求をできる権利をいいます。
建物の不法占有者に対する建物明渡請求や、妨害排除請求、妨害予防請求もその権利の一つです。
これらの「物権的請求権」は、所有権という絶対的な権利から発生する権利ですので、時効により消滅することはありません。
つまり、不動産を購入はしたけれど、10年以上にわたり所有権移転登記をしないでおいた買主がいたとしても、売主に対する移転登記請求権は時効により消滅しません。
これを踏まえますと、売買代金は全額支払って不動産を購入(完全なる所有権が移転)したけれど、所有権移転登記の必要書類が何かの事情で揃えられなくて、売買による「所有権移転仮登記」だけして10年以上経過したケースでは、買主が所有権を持っている以上、所有権が消滅時効にかかることはないので、何十年経っても所有権に基く登記請求権を根拠に仮登記の本登記を売主に対し請求できるのです。
もちろん、売買という原因だけでなく、贈与契約が有効に成立していたけれど贈与による「所有権移転仮登記」だけして10年以上経過したケースも同様です。
このケースは、「予約完結権の消滅時効」とは異なりますので、その違いをよくご理解ください。