被相続人が遺言を作成していなかった場合、相続人全員で遺産分割についての話し合いをする必要がありますが、その際に「相続分の譲渡」という手法・テクニックを効果的に使うことがあります。
「相続分の譲渡」とは、相続が発生した際に、プラスの遺産とマイナスの遺産(債務)を承継する法定相続人としての包括的な権利(相続人としての地位及び権利義務)を他人に譲渡する行為を指します。
では、実務上、どういうケースで、相続分の譲渡が行われているのでしょうか。
今回は、実務において相続分の譲渡をどう使うべきかの参考にすべく、相続分を譲渡するメリットをご紹介します。

相続分の譲渡のメリット
「相続分の譲渡」を活用するメリットについて、下記に簡潔にご説明します。
(1)部分的合意を法的に有効な形で残せる
例えば、法定相続人ABCDEの5名中、ABCDの4名の話がまとまっている(BCDは自分の権利をすべてAに渡すという合意ができている)とします。
しかし、最後の一人である相続人Eが非協力的で協議がまとまらないと、協議は白紙と同じです。
そうこうしている間に、ABCDのうちの誰かが病気や事故、認知症などで判断能力が低下をしてしまうと、もはや5名での遺産分割協議は不能となり、再度後見人を就けて遺産分割協議をゼロから行うことになりかねません。
このことは、ABCDのうちの誰かが亡くなってしまった場合も同様で、新たに当該死亡者の法定相続人を加えて全員で遺産分割協議をし直す必要があります。
このようなケースで、「相続分の譲渡」という手法を使うと、AB間・AC間・AD間において、BCDの各自が持つ相続人としての権利(=相続分)をAに有効に譲渡(有償の場合は「相続分の売買」、無償の場合は「相続分の贈与」となります)することができます。
そうすることで、Aは、Eとの2者間で遺産分割協議に臨めばよくなりますし、Eとの協議が難航しても、BCDから相続分の譲渡を受けた事実は覆ることなく常に有効になります。
(2)単独で相続人の地位から離脱できる
上記(1)でご紹介した事例でいうと、B(CやD)から見れば、他の相続人の同意・承諾を得ることなく、個別の合意で単独で相続関係から離脱できることができると言えます。
煩わしい親族関係から早期に離脱したい場合、親族間の争族トラブルに巻き込まれるのを遮断したい場合などに、有効な手段になり得ると言えます。
(3)遺産分割協議の当事者を減らすことができる
上記(1)の事例でご紹介した通り、Aから見れば、遺産分割協議をする当事者を一人ずつ減らすことができるというメリットもあります。
最終的に協議が難航した場合、遺産分割調停を起こすことも視野に入れることになりますが、調停の当事者を減らし対立構造をシンプルにすることで、調停をスムーズに進めることを狙えることになります。
(4)遺産分割協議の成立を待たずに金銭を得られる
上記(1)でご紹介した事例でいうと、B(CやD)から見れば、自分の相続分をAに有償で譲渡(売却)することで、相続人全員の合意により遺産分割協議が成立するのを待たず、金銭(相続分の譲渡代金)を手にすることができると言えます。
遺産分割協議が長期化することが予想される中で、まとまった資金を早期に入手したい場合、有償で相続分を譲渡することを検討するのも良策となり得ます。
(5)相続分を渡したい人に自由に渡せる
上記(2)のメリットと関連しますが、他の相続人の同意・承諾を得ることなく(他の相続人の意向に影響を受けることなく)、自分の相続分を渡したい相手に、有償又は無償で自由に渡すことができます。
弊所では、相続人間の関係性が微妙又は希薄な相続案件や、そもそも相続人が誰であるか明確に把握できていない相続案件などについて、遺産整理業務として受任した上で、「相続分の譲渡」の手段を活用することは少なくありません。
是非、遺産分割協議における選択肢の一つとして、知っておいていただけるとお役に立てるのではないかと思います。
以上、今回は、「相続分の譲渡」という手段・テクニックを駆使するメリットについて、簡潔にご紹介しました。
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