成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

任意後見のメリット・デメリットとは?

3月 22, 2025

「任意後見制度」は、将来自分が認知症・病気・事故などで判断能力が低下・喪失したときに備え、あらかじめ自分の後見人を指定しておくことができる公的な制度です。

この制度を利用することで、安心して将来の生活を設計することができますが、メリットだけでなくデメリットも存在します。

そこで今回は、任意後見のメリット・デメリット・リスクを一部ピックアップして紹介します。

 

≪任意後見のメリット≫

◎自分の意思で後見人を選定できる
任意後見制度の最大のメリットは、後見人を自分の意思で選定できる点です。

法定後見制度では、判断能力が低下・喪失した後に、申立てに基づき家庭裁判所が後見人を選任しますので、必ずしも自分が希望する後見人が選任されるとは限りません。

一方、任意後見の場合は、あらかじめ信頼できる人物(=任意後見人受任者)を将来の後見人として「契約」で頼んでおくことになりますので、特別な事情が無い限りほぼ確実にその任意後見人受任者が任意後見人に就任できます
自分が元気なうちに誰を後見人にしたいかを検討し、その相手と一緒に公証役場で「任意後見契約公証証書」を作成する必要がありますが、自分の将来の生活について、最も信頼できる人を任意後見人受任者として頼んでおける安心感は、任意後見の一番のメリットと言えるでしょう。

なお、任意後見人受任者は、原則として法律上の制限はありません。未成年者でなければ、配偶者、子、孫、兄弟姉妹、甥姪などの親族はもちろん、親友、司法書士・弁護士等の法律専門職、福祉系のNPO法人なども任意後見人受任者として選ぶことも可能です。

このメリットを踏まえ、下記のような方が任意後見制度を利用されています。

  • 身寄りのない方
  • 家族・親族はいるが、関係性が希薄・断絶しており老後のサポートを頼めない方
  • 家族内(推定相続人間、特に複数の子)の仲が悪く、後見人が誰になるかについて後で紛争が起きそうな方
  • 家族・親族はいるが、敢えて親友、法律専門職、NPO法人などの親族以外に後見人を頼みたい方

 

◎あらかじめ老後の希望を伝えて託せる(老後設計の自由度が高い)
任意後見制度では、自分の判断能力が低下したらどのようなサポートをしてほしいか、自分が希望する老後の生活設計を自分が信頼する任意後見人受任者に託しておくことができます。

たとえば、できる限りの介護サービスを駆使してギリギリまで在宅介護をしてほしい、要介護状態になったら早い段階でこういう高齢者施設を探して入所したい、金融資産はどの銘柄から換価するのか、どの金融機関の定期預金を解約して介護費用に充てるのか、自宅や賃貸用の不動産をどのように管理するのか、売却するタイミングはいつなのか・・・などなど。

また、いつ老後のサポートが必要になるか、そのタイミングを見極めるために、任意後見契約とセットで「見守り契約」を交わすことも多いですし、任意後見を発動する前の元気な間の財産管理(賃貸物件の家賃管理や通帳等の管理、定期的な金銭給付など)を「財産管理委任契約(任意代理契約)」で任せることもあります。

さらには、自分が亡くなった後に残った財産の行く先を指定する「遺言」も任意後見契約と同時に作成する方も多いです。

また、亡くなった後の遺産以外についての希望(葬儀・納骨・永代供養の希望、訃報の連絡事務など)を家族・親族以外に託しておきたい場合は、「死後事務委任契約」も締結する方も少なくありません。

このように、任意後見は自分のライフスタイルや価値観、経済状況、希望に合わせて、老後の設計を柔軟にカスタマイズできる点もメリットの一つになります。

このメリットを生かすためには、自分が元気なうちに(年齢で言うと60歳~70歳代のうちに)、しっかりと将来の生活について、熟考した上で決めておくことがおススメです。

 

≪任意後見のデメリット・リスク≫

▲任意後見監督人報酬が必ず発生する(ランニングコストがかさむリスク)

任意後見は、将来、本人の判断能力が減退した場合に、本人等の申立てにより、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することによって発動(スタート)します。

信頼できる任意後見受任者が正式に「任意後見人」に就任すると同時に、「任意後見監督人」が選任されて、任意後見人の財産管理状況などを定期的にチェックすることになります。

この任意後見監督人は、一般的には、成年後見制度に精通した司法書士・弁護士等の法律専門職が選任されます。この法律専門職は、ボランティアではありませんので、本人の資産から、家庭裁判所の審判に基づき任意後見監督人報酬が支払われることになります。

報酬の相場観としては月額1~2万円となりますが、任意後見制度を利用する限り、この報酬はずっと発生することになります。

したがいまして、家族・親族を任意後見人にしておけば、ランニングコストがかからないと勘違いしている方もいますが、任意後見は一旦スタートすると、絶対的にランニングコストが発生することになります。

また、家族・親族以外を任意後見受任者とする場合、任意後見契約の中で任意後見人報酬も定めることも多いので、そうなると、任意後見人報酬と任意後見監督人報酬の両方が毎月発生し、ランニングコストがかさむリスクについて、きちんと認識をしておく必要があります。

 

▲任意後見人には取消権が無い

任意後見人には、本人が締結した契約などの法律行為について、「取消権」がありません

たとえば、判断能力が低下しているために任意後見を発動させた後に、本人がテレビショッピングやカタログ・インターネット等の通信販売、又は訪問販売などで、不必要な物品を購入した場合を想定しましょう。

この場合、法定後見人(成年後見人・保佐人・補助人)が就任していれば、判断能力の低下している者が行った法律行為について、法定後見人には「取消権」が認められています。つまり、法定後見人が不要な物品の購入だと判断をすれば、契約を取り消し、物品を返却して購入代金の返還を求めることが可能となります。

一方の任意後見人には、この「取消権」が法律上認められていませんので、本人の判断能力が低下している中での契約だったとしても、クーリングオフ期間を過ぎてしまったら、契約を取り消すことは難しくなります。

このデメリットを踏まえますと、下記のような方は、任意後見制度の利用についてより慎重に検討されると良いでしょう。

  • 本人が自宅で独居生活をしている場合で誰かと不必要な契約(物品購入やリフォーム工事など)を交わしてしまうリスクが有る方
  • 浪費癖があり、何かと物品等を購入してしまう方
  • 騙されやすい方

 

▲作成の手間がかかる

任意後見契約は、私文書(Word等で作成して両者が署名押印したもの)で作成しても、法的に効力は生じません。
前述のとおり、任意後見制度を利用するためには、本人と任意後見受任者とで、公証役場で任意後見契約公正証書を作成する必要があります。

つまり、任意後見契約公正証書の作成には、それなりの手間とコストがかかることを覚悟しなければならないと言えます。

とはいえ、自分の将来設計を実現するための必要な工程として、その手間を惜しまずに検討・実行していただきたいです。

 

以上、今回は「任意後見」のメリット・デメリットを一部ピックアップして紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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