◆電子公告手続きの流れ
電子公告制度を導入した場合の手続の流れは、下記のようになります。
(A)定款変更手続き
会社が行う公告を電子公告の方法によって行うためには、定款にその旨を定めておく必要がありますので、会社を設立する場合には、いわゆる原始定款に「当会社の公告は、電子公告の方法により行う。」旨の定めを置き、既存の会社については、同旨の内容に定款を変更しなければなりません。
この場合、URLについては定款に定めておく必要はありません(同法第939条第3項)。
なお、公告方法が電子公告である場合には、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合の公告方法(官報又は日刊新聞紙のいずれか)を定款に定めることができます(同法第939条第3項)。
◇定款の記載例◇
≪電子公告により行う旨のみを定めた場合≫
第●条 当会社の公告は、電子公告の方法により行う。
≪予備的な公告方法として「官報」と定めた場合≫
第●条 当会社の公告は、電子公告の方法により行う。
2 当会社の公告は、電子公告により公告をすることができない事故
その他やむを得ない事由が生じた場合には、官報に掲載してする。
≪予備的な公告方法として「日刊新聞紙」と定めた場合≫
第●条 当会社の公告は、電子公告の方法により行う。
2 当会社の公告は、電子公告により公告をすることができない事故
その他やむを得ない事由が生じた場合には、東京都において
発行される○○新聞に掲載してする。
◇定款変更して電子公告制度を採用する際の留意点◇
1.公告方法を電子公告に改める旨の定款変更の効力は、原則、株主総会で定款変更決議がなされたときに生じます。
しかし、定款変更決議の際に、その効力発生を将来の特定の日からとする旨の決議(いわゆる「始期付決議」)をすることで、余裕をもって将来の特定の日から電子公告制度を採用することもできます。
2.電子公告による公告を行う予定があまり遠くない時期にあるときは、事前に調査機関と相談・打合せをし、電子公告実施のタイミングを計る必要があります。それにより、株主総会の開催日を決定したり、始期付決議の必要性の有無等を検討する必要があります。
3.電子公告制度の採用のタイミングと合わせ、他の定款記載事項の変更(例えば、商号変更や目的変更等)をし、まとめて変更登記をすることで、登録免許税を抑える工夫ができますので、定款の見直し・改訂作業も併せて行うことをお勧めします。
(B)登記申請手続
会社が定款を変更して電子公告を公告方法としたときは、2週間以内に本店所在地の管轄登記所に登記しなければなりません。この場合には、公告方法のほかに公告ホームページのURL(注)についても登記を要します(同法第911条第3項第29号イ)。
※登記すべき事項である公告ホームページのURLについては、公告ページのURL(公告アドレス)又は公告ページが複数にわたる場合に作成する共通ページ(登記アドレス)のいずれでも差し支えありません。
(C)電子公告調査機関への調査の委託
電子公告を行う会社は、公告期間中、電子公告が適法に行われたかどうかについて、法務大臣の登録を受けた電子公告調査機関の調査を受けなければならないとされています(同法第941条)。
調査を受けようとする会社は、電子公告調査機関に対して調査を委託しなければなりません。
◇決算公告に関する特例◇
いわゆる決算公告(株式会社が行う貸借対照表(大会社にあっては貸借対照表および損益計算書)の公告)については、以下のような特例があります。
他の公告事項について電子公告を行う場合と異なり、電子公告調査機関の電子公告調査を受けることを要しません(同法第941条)。
電子公告を公告方法とする会社が決算公告をする場合には、官報または日刊新聞紙を公告方法とする会社の場合と異なり、要旨の公告をすることはできず、必ず全文を公告しなければなりません。
決算公告用のホームページは、他の公告事項についてのホームページとはリンクのない別のアドレスのものを登記することができます(会社法施行規則第220条第2項)。
※決算公告のみをホームページで行う場合
会社の公告方法を官報または日刊新聞紙による方法としている場合であっても、決算公告のみをインターネットのホームページに掲載することも可能です(同法第440条3項)。
決算公告だけをインターネットで行う場合は、定款の変更は必要ありません!
取締役会にて、決算公告のみ電子公告で行う旨の決議をします。その後「貸借対照表に係わる情報の提供を受けるために必要な事項」として、貸借対照表等が掲載されるホームページのURLを登記することになります(同法第911条第3項第27号)。
(G)調査結果通知
公告を官報又は日刊新聞紙に掲載した場合,公告が掲載された印刷物が客観的な証拠資料となるのに対し,電子公告により公告が行われた場合に適法な公告がされたことの客観的証拠資料となるのが調査結果通知です。
この調査結果通知は,登記申請をする際の「公告をしたことを証する書面」として添付することができます。
◆電子公告調査機関とは
電子公告は、官報や日刊新聞紙の場合と異なり、事後の改ざんが容易であるなどの問題があることから、電子公告が適法に行われたかどうかについて客観的証拠を残すために、第三者である電子公告調査機関の調査を受けなければなりません。
電子公告調査機関は、公告期間中、定期的にホームページを調査して正常に掲載されていたかや、改ざんがされていないか等を判定して、その結果を記録することになります。電子公告調査が終了すれば、速やかに調査の結果を電子公告を行った会社に対し通知しなければならないこととされています(同法第946条第4項)。