家族信託 ,

家族信託の仕組みと成年後見制度との比較

4月 19, 2011

『家族信託』『民事信託』と『成年後見制度』(法定後見と任意後見の両方を含むは、どちらも財産管理の一手法ですが、両者には様々な違いがありますので、下記に簡単にまとめてみました。

 

法定後見人 任意後見人 信託受託者
 ①存続期間  後見開始の審判~本人の死亡まで  監督人選任の審判~本人又は任意後見人の死亡まで

 始期も終期も自由に設定可

(無期限に存続させることも可能)

 ②権限  ・財産管理

・法律行為の代理   (同意権・取消権)

・身上監護(身上保護)

 同左

(但し、任意後見契約において代理権が認められた行為に限る)

自由に権限付与できるが、信託財産の包括的な管理・処分が一般的(受託者には「身上監護(身上保護)」の権限はないが、実質的には家族の立場で対応可能)
 ③財産の積極的運用・処分の可否  財産を維持しながら本人のためにのみ支出することが求められる(扶養義務に基づく親族への支出は可)。 積極的な投資・運用や合理的理由のない換価処分、本人財産の減少となる行為(生前贈与)等は不可。  同左  受託者の権限内であれば、その責任と判断において、信託目的に沿った自由な運用・処分が可能。
 ④不動産の処分(賃貸、売却、建替え等)の可否  居住用財産(自宅)は、家庭裁判所の許可が必要なので、入所費用の捻出などの合理的理由が必要となる。  任意後見契約において代理権が付与されているため、家庭裁判所も任意後見監督人の同意も不要。但し、上記③の運用・処分の考え方は適用されるので、合理的理由のない処分行為は、事後的(後見報告の際)に問題になり得る。  受託者の権限内であれば、その責任と判断において処分可能(受託者は、登記簿に形式的な所有者として記載され売買や賃貸借の契約当事者になる)。
 ⑤訪問販売やテレビ通販など、判断能力低下に伴う不必要な買い物への対応  被後見人本人が交わした契約は法定後見人が取り消すことが可能なため(取消権の行使)、買い物を無かったことにできる。  任意後見人に「取消権」はないので、契約を取り消せない。  受託者に「取消権」はないが、信託財産は、委託者本人の財産とは分離され受託者の手元で管理するので、被害を最小限に防ぐことは可能。
 ⑥本人死亡後遺産相続手続き  被後見人本人の死亡により後見業務が終了するので、相続人又は受遺者に相続財産を引継ぐのみで、死後事務や遺言執行・遺産整理は後見人の業務権限の範囲外となる。  同左  預貯金口座の凍結を回避でき、委託者本人が死亡しても信託が終了しない設計にすれば、名義変更等の遺産相続手続きの手間が省け、引き続き受託者の管理下でスムーズな資産承継が可能。
 ⑦監督機関  家庭裁判所又は後見監督人による監督を受ける(報告義務あり)。  必ず就任する任意後見監督人により監督を受ける(報告義務あり)。  必須の監督機関はないが、信託監督人等の監督機関を任意に設定することが可能。
 ⑧財産管理者への報酬  法定後見人への報酬は、家庭裁判所への申立てを経て「報酬付与審判」により金額が決定(自由に設定不可)。 なお、親族後見人でも報酬は貰える。  任意後見人への報酬は、任意後見契約の中で自由に設定できるが、報酬条項が無ければ無報酬となる。  受託者への報酬は、信託行為の中で自由に設定できるが、報酬条項が無ければ無報酬となる。
 ⑨存続期間中のランニングコスト  職業後見人の場合、本人の保有資産や業務内容等に応じて、家裁の審判により月額2~6万円程度の報酬が発生。 親族後見人に後見監督人が就く場合、月額1~2万円程度の報酬が発生。  上記⑧のとおりの契約書所定の任意後見人への報酬に加え、任意後見監督人報酬が月額1~2万円程度発生。  上記⑦⑧のとおり、信託行為に規定した報酬以外は特段発生しない。

 

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★成年後見制度と家族信託の比較表(最新版)2020(A4)

 

 

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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