2025年1月14日付日本経済新聞朝刊の記事によりますと、身寄りのない認知症高齢者らの財産管理や福祉サービス・入所等の契約の必要性から、市区町村長が家庭裁判所に後見人選任申立てをする「首長申立て」の件数が増えている、とのこと。
身寄りのない、あるいは親族はいても関係性が希薄又は断絶していて、頼れる親族がいない単身高齢者が増えていることがその背景にある。
原則としては、本人又は4親等内の親族が後見人選任申立てをすることになるが、自分で申立人になれるほどの判断能力が残っていないケースで、かつ申立人を担う親族がいない場合には、市区町村役場の高齢者福祉課や地域の社会福祉協議会の方が対応をし、最終的に「首長(市長)申立て」をすることになる。
ただ、認知症高齢者等を支える体制作りについては、積極的に「首長(市長)申立て」をしている自治体とそうでない自治体があり、各自治体によって地域差が歴然としているようだ。
そこには、人口規模や市区町村の財政状況により、各自治体として、支援ネットワークの構築・整備のための人員確保・財源拡充という大きな問題が立ちはだかっているのが現状だ。
内閣府の高齢社会白書によると、認知症高齢者の数は、約443万人(2022年)だという。
認知症発症者など判断能力が低下した方全員が成年後見制度を利用する必要はないが、成年後見制度を利用することで生活が安定・改善する方にとってはスムーズに利用できる社会基盤を全国一律で整える必要はある。
その一方で、社会基盤に頼りきるのではなく、元気なうちにあくまで自分で老後に備える意識と実行力を持つことは、重要である。
経済的に余裕がある単身高齢者の方については、自助努力として、自分が元気なうちに司法書士・弁護士等の法律専門職との間で「見守り契約」「任意後見契約」を交わしておき、将来の認知症(本来気を付けるべきは、認知症発症リスクだけではなく、脳梗塞等の大病や事故など様々な原因も想定すべき)により判断能力が低下する状況に備えることは重要だ。
また、自分亡き後のために「遺言」を作成し、遺言執行者に前述の法律専門職を指定しておくこと、さらには葬儀・納骨・永代供養などの手続も任せるために法律専門職との間で「死後事務委任契約」を交わしておくことも良策だ。
また、経済的に余裕がない単身高齢者については、ご近所の方との交流をもっておくことに加え、自分が元気なうちに市区町村役場の高齢者福祉課や地域の社会福祉協議会、民生委員など、公的な支援サービスの提供機関との関りをもっておくことも重要だ。