「遺言書」といっても、法律上細かく分けると7種類ありますが、ここでは、実際に広く利用され皆様に最も身近な「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」について、その概要やメリット・デメリットなどをご説明致します。
1)公正証書遺言
【概要】
・公証役場で2人以上の立会人(証人)のもとに、遺言内容を公証人に口述し、公証人が遺言書を作成する
【長所・メリット】
・形式不備により無効となるリスクがない
・遺言者の意思を公証人が確認するので、あとで遺言の有効性を争われるリスクが軽減できる
・紛失・偽造・隠匿のリスクが少なく安心(遺言公正証書の原本は公証役場で半永久的に保管するので再発行が可能)
・家庭裁判所の「検認」手続きが不要となるので、相続発生後に速やかに遺言内容が実現できる
・文字が書けなくても作成できる(手話・筆談により聴覚・言語機能に障害がある方でもスムーズに作成可能)
【短所・デメリット・リスク】
・立会人(証人)が2人以上必要(推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族は不可)
・手間がかかる(戸籍等の必要書類を揃える必要がある)
・費用がかかる(遺言書で指定する財産の価格に応じて公証人への手数料がかかる)
2)自筆証書遺言
【概要】
・原則として全文と日付及び氏名を自署する
・代筆・ワープロ等で遺言内容部分を作成すると無効(財産の表記部分は印字や不動産登記事項証明書・通帳のコピーでも可)
・押印は実印でなくても有効だが、できる限り実印を押印すべき(シャチハタは不可)
・縦書・横書等の様式や用紙・筆記具の種類は問わない(鉛筆は簡単に書き換えられるので避けるべき)
・封印をするかどうかは自由で効力に影響は無い
・相続発生後、家庭裁判所において「検認」の手続きが必要
【長所・メリット】
・いつでも気軽に作成・書き直しができる
・誰にも知られずに作成できる
・作成時にコストがかからない
【短所・デメリット・リスク】
・家庭裁判所で「検認」を受ける手間とコスト、日数がかかる
・形式不備により無効とされたり、遺言内容や言い回しが法的に不明確で、後日トラブルがおきたり手続きが滞るリスクがある
・保管が難しく、存在が気付かれない危険性がある
・偽造や破棄・隠匿をされるリスクがある
以上、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を簡単に比較しましたが、数多くの相談事例を見てきた法律実務家としては、費用・手間の負担が多いとしても、安心・便利な『公正証書遺言』を強くお薦めします!